新聞・雑誌がこぞって書評特集を組む時期だが、世の中には意外な読書家たちがいる。平凡とは真逆の人生を歩むアウトローの人々は刑務所の中で、ある人は趣味の延長で、人生を変えるような本に出会っていた。元関東連合最高幹部の柴田大輔氏が感銘を受けた「愛読書」はいったいどんな本なのか。
様々な事件を引き起こした半グレ集団「関東連合」の元最高幹部は現在、アプリ開発などを行なうIT企業の社長を務めている。
18歳の時、他グループと抗争事件を起こし、留置所に入った柴田氏に母親が差し入れた一冊が、生涯の書となる『無知の涙』(永山則夫・著/河出文庫/880円・以下価格は税抜き)だった。同書は4人連続射殺事件の犯人が獄中で記した手記である。
「暴走族で暴れていた15歳くらいの時に母親から勧められていた本で、留置所のラジオで永山の死刑が執行されたと聞いて思い出し、差し入れを頼みました。
貧困と差別に苛まれて学のなかった永山は無知ゆえに殺人を犯す。“無知こそ最大の罪である”と教える本です。それで知識欲を刺激され、特別少年院に移ってから様々なジャンルの書物に片っ端から手をつけ、年間150冊以上を読了しました。本を読むことで考える力がつき、多彩なビジネスに進出できたのだと思います」(柴田氏)
※週刊ポスト2017年1月1・6日号