ビジネス

森永卓郎氏が推薦、2017年の日本経済を読み解く本

森永卓郎氏が選んだ2017年の日本経済を読み解く本

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンスだが、本読みの達人が選ぶ書は何か。経済アナリストの森永卓郎氏は日本経済を読み解く書として『株式会社の終焉』(水野和夫・著/ディスカヴァー/1100円+税)を推す。森永氏が同書を解説する。

 * * *
 2016年の最大の事件は、トランプ大統領の誕生だった。トランプ政策が日本経済に与える影響は、三つある。第一は、駐留米軍費用負担の大幅増だ。すでに日本は年間6千億円もの負担をしているが、トランプ氏は「日本は半分しか負担していない」と主張しており、日本の負担増は最大で6千億円に達する可能性がある。

 第二は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の崩壊だ。米国抜きでTPPは発効しない。しかしトランプ氏は、代わりに二国間交渉をすると明言している。そこでは、TPPよりはるかに厳しい市場開放が求められるだろう。

 そして、日本経済に最も大きな影響を与えるのが為替政策だ。トランプ氏は、安倍政権の円安誘導を一貫して非難し、それを許さないとしてきた。円安誘導というのは、アベノミクスの根幹である金融緩和策のことだ。だから、米国の下僕である日本は、トランプ政権下で、もう金融緩和ができなくなる。それは、アベノミクスが終焉を迎えることを意味する。

 本書のなかで、著者は物価が下落を続けていることを根拠にアベノミクスは失敗に終わったと断じた。私は、それは間違っていると思った。2015年の原油価格下落、2016年の円高という特殊要因がなくなる2017年は、デフレ脱却の年になるとみていたのだ。しかし、それはトランプ大統領の誕生で幻に終わった。これから、じわじわと円高が進み、日本はデフレ地獄に舞い戻るだろう。

 そのとき、我々はどう行動すればよいのか。本書は、成長へのこだわりを捨てるべきだと諭している。企業は、過剰な内部留保を国庫に戻して、減益計画を作る。国民は、「より速く、より遠くに、より合理的に」から「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」に考えを切り替える。

 トランプ政権で日本経済が縮小傾向になったとしても、やれ成長戦略だの、景気対策だのと、じたばたせず、身の丈に合った暮らしを淡々としていく。2017年は、そうした経済社会への大転換期になるのではないか。

※週刊ポスト2017年1月1・6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《ショーンKの現在を直撃》フード付きパーカー姿で向かった雑居ビルには「日焼けサロン」「占い」…本人は「私は愛する人間たちと幸せに生きているだけなんです」
NEWSポストセブン
気になる「継投策」(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督に浮上した“継投ベタ”問題 「守護神出身ゆえの焦り」「“炎の10連投”の成功体験」の弊害を指摘するOBも
週刊ポスト
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
3月末でNHKを退社し、フリーとなった中川安奈アナ(インスタグラムより)
《“元カレ写真並べる”が注目》元NHK中川安奈アナ、“送別会なし”に「NHK冷たい」の声も それでもNHKの判断が「賢明」と言えるテレビ業界のリスク事情
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン