かつては、紅白歌合戦と並んで年末の国民的関心事だった日本レコード大賞。しかし、最近では注目度が低くなったどころか、『週刊文春』では買収疑惑も報じられた。
その報道とは、芸能プロ「バーニングプロダクション」が、2015年のレコ大の大賞である三代目J Soul Brothersが所属する「LDH」に、〈年末のプロモーション業務委託費〉の名目で1億円の請求書を出したというもの。そして、『週刊文春』では“レコード大賞のドン”として主催団体の日本作曲家協会会長・叶弦大氏(78才)が登場し、こう発言している。
「このような事態になったことは大変遺憾で、主催者として大変申し訳なく思っています」「伝統あるレコード大賞が汚されてしまった。当事者には、どうしてくれるのかと言いたい」
しかし、一方でこの叶氏がレコ大を私物化しているとの指摘もある。
叶氏はあくまでレコ大の主催者という立場で、審査委員ではない。だが、審査委員に対して絶大な力を持っている。
「審査委員は毎年変わりますが、人選は叶さんの“専権事項”です。記者やジャーナリスト、音楽評論家にとって、レコ大審査委員の肩書は魅力的。だから、2017年も選ばれたければ叶さんには逆らえません」(審査委員経験者)
2016年の優秀作品賞(10作品)の最終選考は11月17日に行われた。その数日前のことだ。複数の審査委員に、叶氏から電話が入った。
「演歌枠は2枠でいいでしょうね。2016年は坂本冬美ちゃんが一生懸命やってるからいいんじゃないか」
例年、演歌の枠は2つか3つ。その1席は、圧倒的な人気の氷川きよしでほぼ当確だ。残る1席には複数の候補がいて激戦だったが、決め手は“鶴の一声”だった。
「審査委員は自分の選んだ作品に“挙手”して票を入れます。つまり記名投票で、叶さんの意思に反せば、2017年は審査委員に呼ばれなくなるかもしれない。結局、2016年は坂本冬美で決まりました」(前出・審査委員経験者)
さらに、12月30日に決まる大賞にも叶氏の意向が滲む。
「12月中旬、叶会長がAKB48のレコード会社幹部に連絡し、“大賞はAKBで行こうかという動きがある”とハッパをかけたんです。そう声をかけられればレコード会社も本気で賞レースの“運動”をすることになる。中立の立場であるはずの叶会長が特定の歌手に肩入れするのはいかがなものか」(ある作曲家)
作曲家協会は2017年で60周年、レコ大は2018年で60周年を迎える。叶氏が2017年以降も会長を続投すれば、それらの節目を仕切ることになるという。
日本作曲家協会は「公益性がある」と認定され、税制が優遇されている公益社団法人だ。もし「私物化」されているなら、公益法人の認定も再考される必要がある。