75歳以上の高齢者の約3割近くの人が10種類以上の薬を服用しているという。『週刊現代』は薬をやめる上で〈まずは10種類の薬を3種類に減らす〉と題する記事を以前掲載した。たしかに薬は少なければ少ないほど良いように思えるが、果たして真実はどうか。
『誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方―ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ―』の著者で、北品川藤クリニック院長の石原藤樹氏がこう指摘する。
「病気や薬の種類、患者の年齢、病状によって、薬をやめやすい人とやめにくい人がいます。それを無視して、一律に『3種類に減らす』とは言えません。極端な話、10種類全て必要な人もいれば、不必要な人もいるのです」
同誌では薬の服用を「いきなりやめる」という視点で論じているが、石原氏は警鐘を鳴らす。
「薬のやめ方に関しては“イチかゼロか”ではありません。実際に薬をやめるためには、『分量』と『期間』という重要な2つの視点から検討する必要がある」
薬の服用中止に関する公的なガイドラインは国内に存在しない。そんな中、石原氏は様々な国内外の科学的データから、薬のやめ方を提案している。「降圧剤(高血圧治療薬)」の減らし方を例に解説する。
「『現代』の記事ではARBとカルシウム拮抗薬、利尿剤の3種類の降圧剤を同時に服用する患者は飲む薬の『種類を減らせ』と指摘しています。
ですが降圧剤は急に服用をやめると、数値が上昇して元に戻る『リバウンド』の問題がある。だから、まず最初は薬の『分量』を段階的に減らしていき、3か月以上正常値が維持されていれば、そこで初めて服用中止を検討すべきなんです」
※週刊ポスト2017年1月1・6日号