いま株式市場の潮目が大きく変わろうとしている。慎重に相場を読み解くことで長く生き残ってきた歴戦のファンドマネージャーも、その見通しを大きく強気転換し始めた。今、市場に何が起こっているのか、「ひふみ投信」運用責任者でレオス・キャピタルワークス代表の藤野英人氏が解説する。
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2016年の日本株は、前年末から続いていた弱気相場によってひたすら辛抱が求められる1年だった。それでも私が運用責任者を務める「ひふみ投信」は、過去最高値更新も視野に入るパフォーマンスをあげることができた。それは中小型株を中心としたデフレ対応のポートフォリオを組みながら、夏以降に半導体関連の輸出・ハイテク株の比率を徐々に上げていったことが大きい。
ポートフォリオを組み替えていった背景には、何より世界情勢の潮目の変化がある。リーマン・ショック以降、米日欧では「金融市場にお金を流し込みさえすれば自動的に経済がよくなる」として大規模な金融緩和が進められてきたが、いよいよその金融政策にも手詰まり感が出てきた。そこで世界的に経済対策の主流が「金融」から公共投資を中心とした「財政」へと変わろうとしているのだ。
大きなターニングポイントは、米大統領選である。大方の予想を覆してドナルド・トランプ氏が新大統領となった。トランプ氏が政策で重視するのは大規模なインフラ投資で、今後は飛行場や港湾、道路などの整備が急ピッチで進むだろう。
公共投資によって関連する建設業界などでは人手不足からブルーワーカーの雇用が増え、それが低所得者対策にもつながる。また高速道路などでは自動運転をはじめとした車道のIT化が進むことも予想される。そうなれば、建設や建設機械といったレガシーな産業が潤うばかりか、IT系を中心とした成長産業のイノベーションを後押しすることにもつながり、一挙両得を狙えるのだ。
そのような好循環をもたらすインフラ投資は米国だけではない。中国では自国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)をテコに、アジアからヨーロッパにかけた広大なシルクロード経済ベルトを構築する「一帯一路」構想を進めようとしている。ロシアでもシベリア鉄道の日本までの延伸計画が浮上しているように、いまや世界的な「インフラ大競争時代」が幕を開けようとしているのだ。
そのようなグローバルなインフラ投資がレガシーな産業からIT系などの新興産業まで及ぶことで、幅広い企業の業績が上向く期待が高まり、それはすなわち株価を押し上げる要因となる。とりわけ2017年以降は、さらにその流れが加速していく可能性が高く、私は2017年の日本株についてもこれまでとは一転、相当強気に見ている。