『週刊現代』の〈ちょっと待った! 全身麻酔が体に残す大ダメージをご存じか〉(7月2日号)では〈麻酔が原因で手術中に亡くなる患者は10万人に1人〉という匿名医師のコメントや〈全身麻酔を1回受けると、寿命が6年縮む〉というネット上の噂の存在を紹介。
全身麻酔による低酸素脳症での死亡事例などを挙げた上で全身麻酔には「脳が酸素不足になって譫妄状態に陥るなど、重い合併症が起きるリスクがある」とする医師のコメントが掲載された。
この記事を巡っては、コメントした讃岐美智義広島大学病院麻酔科・講師が『週刊文春』で、自分のコメントが「説明不足」な形で掲載されたと抗議する騒動になった。
文春で「低酸素状態は放置しませんし、それを手術後の譫妄に結びつけるには無理がある」と自らの名前で掲載されたコメントの間違いを指摘した讃岐医師に、改めて麻酔のリスクをどう捉えるべきかを聞いた。
「『週刊現代』には具体的な数字が出てくるのに、その出典、根拠が示されていない。『麻酔が原因で手術中に亡くなる患者は、10万人に1人』と書かれているが、これは1999~2003年の麻酔科医の協力のもと偶発的に起こった症例を調査した『麻酔偶発症例調査』における数字だと思われます。
古いデータで、その後安全対策が進んだことにより、2009~2011年の同調査(第4次)では100万例に7例と、さらに低くなっています。加えて、患者の術前の健康状態によって死亡率は大きく異なります。
術前合併症が何もない(手術する疾患以外の全身疾患を有しない)患者で、麻酔管理が原因で亡くなったのは167万例に1例(3次調査)です」