米国では下馬評を覆してトランプ新大統領が誕生、英国ではEU離脱(ブレグジット)が住民投票により決定するなど、波乱の年だった2016年。はたして2017年はどうなるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、2017年の日本の姿を分析する。
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本連載で何度も指摘してきた通り、安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は完全に失敗した。しかし、安倍政権自体は対抗馬がいないので、自民党総裁任期延長によって2021年まで一強体制のまま継続する可能性が高いだろう。その間、政治家たちはアメリカで言うところの「ポークバレル」(※)の分捕り合戦に血道を上げるに違いない。
【※ポークバレル/議員が人気取りのために政府に支出させる国庫交付金や補助金など】
その一方で国民は老後不安を募らせ、消費はいっそう低迷するだろう。今のところ為替と株は“トランプ相場”で皮肉にも安倍政権と日銀が目指していた円安・株高に振れているが、これはアメリカの金融規制法「ドッド・フランク法」の縮小・廃止や雇用創出などを公約に掲げているトランプ大統領に対する幻の期待値が形成しているかりそめのミニバブルである。
閉鎖主義の“アメリカ第一トランプ政策”を本当に実行すれば物価は高騰し、リーマン・ショックを上回る“トランプ・ショック”がやって来るだろう。
世界は今、日本が経験した「失われた20年」を追体験しているようなものであり、そのために動揺=保護主義=反グローバリズムの波がますます強まろうとしている。だが、すでに日本はそういう時代に耐えてきたのだから「まだ大丈夫」と思って、特定他国に依存しない今後の進路を考えることに集中しなければならない。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は頓挫したが、グローバリズムの流れは不可避である。その中で個人も企業もどのように生き抜いていくかを考え、世界に先駆ける技術や能力を磨いたり、新たな富を生むシステムを構築したりする好機と心得るべきである。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号