75歳以上の高齢者の約3割近くの人が10種類以上の薬を服用しているという。『週刊現代』は薬をやめる上で〈まずは10種類の薬を3種類に減らす〉と題する記事を掲載した。たしかに薬は少なければ少ないほど良いように思えるが、果たして真実はどうか。
『誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方―ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ―』の著者で、北品川藤クリニック院長の石原藤樹氏はこう指摘する。
「薬のやめ方に関しては“イチかゼロか”ではありません。実際に薬をやめるためには、『分量』と『期間』という重要な2つの視点から検討する必要がある」
つまり、一概にはいえず、「ケースバイケース」といったところだろう。とはいっても、中には「分量」を気にしなくていい薬もある。
「代表的なコレステロール降下剤のスタチンの場合、急にやめても心血管疾患のリスクが高くなるというデータはありません。そのため、『量を減らす』というステップを踏まずにいきなり、服用を中止しても問題ないでしょう」(同前)
だが、そのスタチンは服用の「期間」が重要になる。病気や薬の種類によっては、「ある程度の期間、飲み続けないと効果がない薬がある」(同前)からだ。
「スタチンは5年以上服用を続けた場合、中止してから20年間にわたって心筋梗塞など心血管疾患のリスクを、2割以上低下させるというデータがあります。
そもそもこの薬はコレステロールを下げるためではなく、心血管疾患予防のために服用する。そのため、既に服用している人が“1年で正常値になったからやめる”では何の意味もないんです。5年以上服用して初めて、中止を検討する段階になる。
しかもこれは、既往歴のない人に限った話です。心疾患の病気になったことがある人は、再発の危険があるため10年間は使用し続ける必要があるでしょう」(同前)
また、やめやすいか、やめにくいかは「年齢」によって異なるケースもある。