景気の良し悪しはさておき、2016年は日本のみならず世界中の話題をさらい、爆発的にヒットする商品やコンテンツの“当たり年”だった。「ポケモンGO」、「シン・ゴジラ」、「君の名は。」、「PPAP」……。
「これまでは、日本市場でしか通用しない“ガラパゴス化”を象徴するようなヒット商品も多かったのですが、今年はエンタメ界で世界との垣根が一気に取り払われた1年だったのではないでしょうか」
こう分析するのは、日経BPヒット総合研究所上席研究員の品田英雄氏。だが、いくら話題先行でも、中身の魅力が詰まっていなければここまでブームにはならなかったはずだ。そこで、今年も当サイトでは品田氏にさまざまな分野のトレンドから、共通する「ヒットの法則」を導き出してもらった。
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いまや日本のエンタメ作品は、ネットやSNSの力によって、以前のように肩に力を入れて世界進出を目指さなくても、世界中の人が勝手に見つけて面白がってくれる時代になりました。「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」でYouTubeの動画再生回数1億回を突破したピコ太郎さんが、それを見事に証明しました。
音楽界でいえば、米ビルボードの週間チャートでトップ50入りを果たした女性3人組のメタルダンスユニットのBABYMETALや、8年ぶりのアルバムがiTunes Storeランキングで世界的にヒットする宇多田ヒカルさんもしかり。もっとも彼女たちは海外での活動実績も大きいと思いますが、綿密に作り込んだ“プロの技”は、世界共通で高い評価を受けることが分かりました。
職人的なこだわりという点でみれば、今年大ヒットした映画は新しいヒットの方向性を示しています。キーワードはずばり「リアリティー」です。
シリーズ史上最高の興行収入となる81億円を突破した「シン・ゴジラ」は、「新世紀エヴァンゲリオン」を手掛けた庵野秀明さんが総監督を務めたことで、若いアニメファンまで取り込みましたが、それよりも共感を呼んだのがビジネスマンです。ゴジラ出現に際し、コピー機がずらりと並ぶ対策本部や、会議で官僚たちが大臣にメモを入れる描写などは、現実の国家や会社組織を彷彿させるリアリティーがありました。
また、ゴジラが通った東京駅までのルートを再現したり、自衛隊がどうやって現場に辿り着いたのかを具体的に調べたりするなど現実に忠実な設定をしています。11月に公開されてヒットした「この世界の片隅に」でも、原爆で空襲された広島や呉の町並みを再現。言ってみれば、証拠の照らし合わせのようにして映画を観る人がたくさんいました。
極めつけは、8月の公開以来、205億円を超える興行収入を叩き出した「君の名は。」でしょう。
この映画の舞台には、四谷の須賀神社や信濃町の歩道橋、代々木駅など実在の場所や施設が次々と登場します。また、映画と同じ光景が広がる場所を特定し、実際に訪れて写真を撮る「聖地巡礼」者が続出したことからも分かるように、いまヒットする映画は、たとえ作り話であっても、その背景にある設定は、自分を投影できるリアリティーに溢れています。