雑誌の医療特集ブームの根底にあるのは、患者の医者に対する不信感だろう。『週刊現代』でも、〈大学病院だからといって、信用してはいけません〉〈大学病院の医者たちが怒った! 「町医者ほど怖いものはない」〉などの見出しが目に付いた。
では実際、世界的に見て日本の医者のレベルはどの程度なのだろうか。欧米の医療事情に詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。
「2013年に行なわれた日本消化器外科学会総会で、がん手術の『実力』を国際比較した興味深いデータが発表されました。
直腸がん患者のデータを分析した結果、日本は術後30日以内死亡率が0.4%、90日以内死亡率は0.9%という数値だったのに対し、欧米の平均データでは、術後30日以内死亡率が3.9%、90日以内死亡率5.0%と、どちらも日本の死亡率が圧倒的に低いことが示されました。
肺がんでも、30日および90日死亡率は、アメリカがそれぞれ1%、2.5%であるのに対して、日本は同0.35%、0.79%というデータがあり、日本の方が低くなっています」
これらのデータによると、日本の外科医の手術レベルは高いと見ることができるだろう。ただし、「制度面では日本が欧米と比べて劣っている部分もある」という指摘もある。元ニューヨーク医科大学臨床外科教授の廣瀬輝夫氏は言う。
「アメリカには医師免許の更新制度があり、専門医、開業医ともに試験や審査をパスするために生涯教育を受けなければ、免許を失います。
それに対して、日本は一度医師免許を取得すればほぼ無条件で生涯にわたって医師でいられてしまう。そうした制度上の問題点から、地方の町医者などの中に、勉強を怠っている医者がいる可能性は否定できません」
※週刊ポスト2017年1月1・6日号