かつてポルノ映画界の女王と呼ばれた女優・愛染恭子が、1994年に発売されたファンクラブ限定の10万円写真集『愛染恭子』の思い出を語る。
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1991年に樋口可南子さんの『water fruit』、宮沢りえさんの『Santa Fe』が世に出て、実質的にヘアヌードが解禁になってから3年後にこの写真集を作りました。ヘアヌードブームが徐々に沈静化しつつあった頃で、正直「いまさら出すの?」という気持ちもありました。そのため、他にはない高級な写真集を出したいと思ったんです。
ファンクラブ会員限定で100冊、1冊10万円というお値段です。高すぎるかなと思いましたが、あっという間に売り切れました。
高級感を醸し出すため、和のイメージにしたいと思い、伊豆の旅館に1週間泊まり込み、着物で朝から晩まで毎日撮り続けました。写真集では8種類ほどの着物を着ていますが、実際には20着くらい用意してもらって、天候や撮る場所に合うものをその場で選びました。
着物は普段着ることはないですし、撮影でもほとんど使ったことがありませんでした。ヌードは腰をくねらせるとセクシーに見えますが、着物は帯で締めつけられているので、思うように動けないんです。どうしたらいやらしく見えるか、ポージングには苦労しましたね。
カメラマンは写真集『桜桃記 終宴』と『皆既日食』の2冊を撮影してくれた佐藤健さんに頼みました。佐藤さんは無駄に褒めることをしない方で、口数も少なく、「こうして、ああして」とあれこれ指示するタイプのカメラマンではありません。
撮影の始めに「そこに立ってください」という程度で、私がなかなか動かなくても決して急かさない。自然に私が動き出したらシャッターを切り始め、畳に寝そべれば真上に跨がって撮ってくれる。股を大きく開いたり大事な部分に手を当てたりしていますが、すべてアドリブなんです。シャッター音で感じさせてくれる方で、相性が良かったんだと思います。好きにさせてくれるから緊張もしなかったですし、何より素の自分が出せたと思っています。
昨年、佐藤さんの事務所にこの写真集を30万円で売ってほしいという問い合わせがあったそうですが、この作品はファンの方だけでなく、私にとってもかけがえのない宝物です。
【プロフィール】あいぞめ・きょうこ/1958年生まれ。千葉県出身。1975年、山本晋也監督の『痴漢地下鉄』で映画デビュー。1981年に主演した映画『白日夢』では俳優・佐藤慶との“本番”濡れ場を披露し注目を浴びた。2010年にヌードを封印し、映画監督、セックスカウンセラーとしても活動している。
撮影■佐藤健
※週刊ポスト2017年1月1・6日号