『NHKのど自慢』で、昭和歌謡を歌う中学生や高校生が増えている。今年の放送では、ネット上で「中学生や高校生がなんでこんな歌を知っているのか?」と話題になることがよくあった。例えば、2016年2月、福岡県飯塚市での放送では、高校2年の男子が43年前の吉田拓郎のヒット曲『落陽』(1973年)を熱唱。さらに同じ日、高校受験を控えた女子中学生2人組が選曲したのは、49年前のザ・ピーナッツによる名曲『恋のフーガ』(1967年)だった。
80年代のアイドルソングを歌う中高生も注目を集めた。同年5月1日、富山県上市(かみいち)町の放送では、最近近藤真彦にハマっているという男子中学生が、制服姿で金と銀のハチマキを頭に巻き、『ギンギラギンにさりげなく』を絶叫。
2014年5月4日、香川県三木町からの生放送。中森明菜の『少女A』を高2の女の子が歌うと、ゲストで歌手の岩崎宏美が「高校生で中森明菜さんをお好きなんですか?」と驚いていた。
そんな中高生を始めとする若い世代は、どのようなキッカケで、生まれる前の「昭和歌謡」を知るのか、背景をさまざまな角度から探ってみる。
◇その家ごとに受け継がれる名曲
まずは何といっても親や家族の影響が大きいだろう。10月30日の同番組は石川県野々市(ののいち)市の放送だったが、高校2年の女子生徒が、松田聖子の名曲『SWEET MEMORIES 』で見事合格。鐘が鳴った後、この曲について、「母親がお弁当を作るときに歌っている」ことを明かしていた。
2015年6月7日、兵庫県朝来(あさご)市で行われた公開放送。若い男性が、先と同じ吉田拓郎の『落陽』で合格。父親から、幼少時代から聴かされてきたので、その父を喜ばせようと歌ったという。そしてさらには、今度生まれてくる我が子にも歌い継ぎたいと言っていた。つまり曲というのは、一家代々歌い継がれる、見えない「家宝」なのだ。
◇若者にとっては懐メロも「新譜」 YouTubeも影響