コラム

豊洲移転、五輪会場…公的事業に孕む弊害とは何か?

公的事業の問題点とは?(豊洲)

 築地市場の豊洲移転問題、東京五輪の会場問題など、公的事業を巡るニュースが世間を賑わせている。はたして公的事業の問題点はどこにあるのか。かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍した赤城盾氏が解説する。

 * * *
 東京都の都政改革本部の調査チームの最近の試算によれば、2020年東京オリンピックの開催に要する費用は3兆円を超えるらしい。2013年に招致に成功した際の見積もりは約7000億円であった。

 もし、まともな民間企業でこれほどの見込み違いが発覚したら、確実に中止を含めた抜本的な計画の見直しが検討されるであろう。そのまま計画を進めれば採算割れに陥る可能性が極めて高く、そういうことを繰り返していたら会社は潰れてしまうからである。

 しかし、オリンピックにせよ築地市場の豊洲移転にせよ、国や地方公共団体が主体となる事業では、多くの場合、そもそも採算という概念がない。企業の活動は、売り上げを費用よりも大きくして採算を取るというシンプルで明白な原理に貫かれている。一方、公的な事業の目的は公共の利益という漠然としたものなので、費用が適正かどうか計る基準がないのである。

 東京都心部に住む私自身としては、混雑が嫌だしテロも怖いし、莫大な収益が上がって税金が安くなるという夢のような話でもない限り、東京でオリンピックなどやって欲しくない。しかし、1000万都民の多数がこの2週間のお祭り騒ぎのために1人当たり3万円払ってもいいというのであれば、3兆円は公共の利益のための適正な費用であると認めざるをえない。

 7000億円から3兆円に値上がりしたら賛成票はずいぶん減るのではないかとも思うが、開催の決まったオリンピックを後から辞退するのは難しい。なんとしても3兆円の利権を創出したい政治家連中は、招致に当たって意図的に費用を過少に見積もったのではないだろうか。

 都民や国民の全体にとっては3兆円の負担であるが、施設や道路を建設したり、輸送、警備など大会の運営に関わったりする限られた数の業社にとっては、3兆円は巨大な売り上げであり、価格競争に脅かされずにたっぷり儲けられる美味しい利権である。

 自由競争によって価格が決まらない公的な事業は、資源の配分を歪めて経済全体の効率性を損なう。だから、肥大化させないことが望ましい。かつての小泉内閣のキャッチフレーズであった「民間でやれることは民間で」は、経済学のもっとも古典的な原則のひとつである。

 もっとも、公的支出が肥大化することの端的な弊害として挙げられるのは、金利と物価の上昇である。現状では、そのどちらも問題になっていないどころか、むしろ、マイナス金利とデフレが経済停滞の元凶ではないかとあげつらわれている。バブル的な資産インフレと将来的な財政破綻は懸念されるが、オリンピックでも何でもやって、財政支出を拡大したほうがいいという考えもあるだろう。

マネーポスト2017年新春号

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン