近年、開腹手術以外に「切らないがん治療」として内視鏡手術や腹腔鏡手術が注目されている。
内視鏡手術ではスコープの先についた特殊なナイフでがんを切除するなどし、腹腔鏡手術では患部近くに数か所の穴をあけ、そこからスコープや器具を挿入する。患者の体への負担が少ないなどのメリットが強調されがちだが、もちろんリスクはある。
『週刊現代』7月2日号では〈内視鏡、腹腔鏡手術も危ない〉と題して、2014年に判明した群馬大学病院での手術ミス(腹腔鏡手術で8人が死亡)などを詳述している。
重要なのは、そうした事故が一体どれくらいの頻度で起きているかということだ。
日本消化器内視鏡学会は内視鏡治療による偶発症(治療中に起きる不都合な症状)の調査を行なっている。同学会が会員の1188施設にアンケートし、2003~2007年に起きた偶発症についてまとめた論文が公開されている。国際医療福祉大学大学院教授の武藤正樹氏の解説。
「内視鏡による腫瘍治療では、消化管などの穿孔(穴が空くこと)が考えられますが、そうした偶発症は0.58%の割合で発生しています。腹腔鏡下の大腸切除術は1.32%。同じく胃切除術は0.94%です。どれも決して低い数字ではない。
内視鏡や腹腔鏡はメリットも大きいが、こうした偶発症データも知った上で病院を選ぶべき。近年は診療実績を公開する病院も増えた。受診の際に実績を聞いて丁寧に説明してくれるか、といった点にも注意すべきです」
手術についての議論はメリットもデメリットも強調して説明されがちだ。医師の説明で、客観的なデータが提示されるかは、重要なポイントだ。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号