「記事に書いてあったから、という理由で『薬をやめる』と言い出す患者が多くて困っている」──最近、取材する医者からこうした不満をよく聞く。週刊誌やネットの記事が医者の言うことを聞かない「モンスター患者」を生み出しているというのだ。だがその逆に、ただ医者の言いなりに従うだけの「良い患者」は、実際のところ「医者にとって都合の良い患者」でしかない。
是非はともかく、週刊誌による「飲み続けてはいけない薬」キャンペーンに対する反響の大きさは、患者が今後、医師とどう向き合うべきか、という問題を提起した。日本在宅薬学会理事長で医師の狭間研至氏はこう言う。
「何も考えずに医者の言いなりというのは問題ですが、何でも疑心暗鬼になるのも問題です。患者さんの中には、どこかにいる“スーパードクター”や“スーパー治療薬”がいつか病気をすべて治してくれるという『青い鳥』幻想を持っている人も多い。そうした幻想を捨て、信頼できる医者を身近に見つけることが重要です」
信頼できる医者かどうかを見極めるポイントは何だろうか。
「いきなり『薬をやめる』と言うのではなく、『なぜこの薬を飲まないといけないんですか?』と質問してみるのはどうでしょう。そこで誠実な対応をしてくれる人は、信頼できる医師と言えるでしょう。患者の疑問にきちんと答えてくれない人や、自分の専門分野にしか興味を示さない人であれば、信用できないと言われても仕方ありません」(同前)
第三者の視点を入れることも重要という。
「別の医者の意見を聞く『セカンドオピニオン』はもっと気兼ねなく受けたほうが良い。それでいやな顔をする医師を主治医に選ぶのはやめた方がいいと思います」(同前)
地域医療機能推進機構・本部顧問、徳田安春・医師は「医療はチームでやるものという意識を、患者側も持つべきではないか」と指摘する。
「医者だけでなく、看護師、薬剤師、検査技師、ソーシャルワーカーなど、多くのチームで成り立つのが医療です。メディアもチームの一員と言っていいでしょう。そのチームワークを良くしていくことが、良い医療に繋がるのだと思います」
※週刊ポスト2017年1月1・6日号