お金に振り回されると人生ロクなことにならないという事例のひとつといえるのかもしれない。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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2016年における中国経済の大きな課題といえば過剰生産への対応であった。いわゆる国有企業改革であるが、そうしたメニューが次々と話題を集めた一方で、政府が対応に苦慮したのが不動産バブルへの対応であった。
昨年は年初から上海や北京など各省都に準ずる一線都市と呼ばれる都市で不動産価格が爆騰し始め、夏ごろには中国の不動産王と呼ばれる万達グループの王建林氏が「(不動産価格高騰)の理由が誰にも分らない」と答えて人々を驚かせた。
この不動産価格の高騰の原因は、これまでもいろいろ指摘されてきたが、個人の投資家のマンション投資も、その大きな要因であることは間違いない。そのため政府は、一つの家庭が二つ目のマンションを購入する際には融資受けられる条件を厳しくするなどして、その対策としてきたが、この規制をかいくぐるために流行したのが、いわゆる「偽装離婚」であった。つまり、一度離婚して2人が一つずつマンションを購入した後に、再び結婚するのである。
これが可能な前提は、いうまでもなく夫婦の絆が強いことであった。もちろん、ここ数年間、問題が大きく報じられたことはなかった。
しかしここにきて懸念はついに現実となったようなのだ。『鄭州晩報』(2016年10月12日付)の記事のタイトルは、〈夫がマンション購入のため「偽装離婚」 妻はマンションをもって別の男に嫁ぐ〉である。こうした現象はいまや全国的な問題になっているという。