元・宝塚歌劇団花組トップスターで、1998年に同劇団を退団後は、女優として活躍している真矢ミキさん(52才)。今回は、ちょい足しする“個性”と“男役”について語った。
* * *
10代後半から30代半ばまでの間、舞台上で“男”として過ごしてきた私が“男”を磨くためにさまざまな研究をした…。
宝塚の男役というのは長い歴史のなかの様式美というものがあって、歌舞伎の形のような男役像を日々学び習得していた。それはそれで魅力的なんだけど、小、中と男女共学で育った私はいつも、もうちょっとリアルな男性をやりたいなぁと思いを募らせていました。
そんなある日、西麻布で夜な夜な外国人ダンサーの粋な仕草にインスパイアされた私は、早速、舞台で実践していた。他の男役が美しいマントをひるがえし、両手を広げて愛を伝えているさなか、私は舞台上で微動だにせず、片方の眉のあげさげあげさげ、続いて2階席の後ろまで大きなフライでウインクを飛ばし、暇さえあればピストル回す回す(笑い)。
…愉しかった。とにかく、毎日が「あぁ、男ってなんて愉しい!」って心から思えた。
だが、当然のようにいろんな問題が後から波のように押し寄せてきて、私のもとには否定的な言葉がいくつも届いた。
「それは宝塚ではないんじゃないの?」
「宝塚には変わらなくていい、変えてはいけない伝統がある」
…悔しかった。だって、私なりの、宝塚を愛してやまないからこその挑戦だから。新しいことをまずはやってみたかった。…たった1人の革命であった。
宝塚、見ず嫌いとか、見て嫌いとか言わせない。見て見て、見てください!! と叫びたかった。そして喜びは、それから随分後のこと、私が宝塚に入団して14年目にあたる頃にやって来ました。