信じられないような事件が実際に起こるのが中国である。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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世にも恐ろしい事件とは、まさにこのことである。
中国の各地にはいまでも「死後婚」(もちろん違法である)という習慣が残っている。「冥婚」とか「陰婚」という言い方もされるが、要するに死体になった者同士で執り行われる婚姻である。
これをする目的は、結婚することなく死亡した若者の霊を慰めることにある。不慮の事故など、子孫を残すことなく死んでしまった若者の呪いが、自分たちの子孫にふりかかり子供ができなくなってしまうと信じられていることから、その霊を慰めて子孫に祟らないようにするための儀式だ。
昨年7月、「冥婚」を行っていた河南省林州市原康鎮で事件は起きた。
一家の若者が病気で亡くなったことを受けて「冥婚」の準備に入った親戚一同は、人づてに湖南省から結婚相手の女性の死体を購入することを決めた。値段は3万元(約50万円)で名前は趙梅(仮名)と知らされた。
一族は集まり「冥婚」の儀式も無事終わり、いよいよ二人を一緒に埋めようと、小雨の降る中で穴を掘り始めたとき、突然、棺桶から大きな音がして人々を凍り付かせた。一同が静まり返るなか、棺桶を中から叩く音が鳴りやまず、恐ろしくなった一同はスコップを放り出して逃げたのだが、最終的には戻って棺桶をあけた。すると、おどろいたことに趙梅が出てきたというのだ。
事件を報じた『中国青年報』によると、趙梅は耳に重度の障害を持ち、それを知った犯罪グループに騙され、薬で眠らされたまま死体として売られてしまったことが事件の真相だという。
目覚めるのが少し遅かったらどうなっていたのか。それを考えると恐ろしくなる。