昨年、相撲界は1990年代の若貴フィーバーに迫るブームに沸き、年6場所90日中、88日間が大入り満員となった。1月8日からの初場所も、20年ぶりに番付発表前から前売り券が完売。そうしたなかで協会やファンが待ち望んでいるのが、1998年の若乃花以来となる日本人横綱の誕生だ。
「昨年は日本人大関から琴奨菊、稀勢の里、豪栄道の3人が綱取りに挑戦。しかし、綱取り場所の優勝を白鵬、日馬富士、鶴竜のモンゴル人3横綱にさらわれ、“壁”の厚さを実感する1年だった」(担当記者)
9月場所を全勝優勝した豪栄道が11月場所で9勝6敗に終わり、挑戦はまたゼロからのスタート……と思いきや、協会内では「まだ日本人大関の綱取りは継続中」との声があるのだ。
「稀勢の里ですよ。11月場所も3横綱を破って12勝3敗で準優勝。昨年の年間最多勝も獲得した。稀勢の里のいる田子ノ浦部屋は二所ノ関一門ですが、一門の総帥で協会ナンバー2(事業部長)の尾車親方(元大関・琴風)は“3横綱がいるなか1年通して一番勝ったのだから十分、綱の力はある。これを評価するのも大事”とあちこちでアピールしている」(協会関係者)
たしかに振り返ると11月場所後の横綱審議委員会でも、稀勢の里が初場所で優勝した際の扱いについて守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)が「両手を挙げて(横綱昇進に)賛成というわけにはいかないなと個人的には考えている」と、非常に微妙な言い回しのコメントをしている。
「すべては、初場所で稀勢の里が白星を積み重ねていった際に、“やはり優勝なら昇進を検討すべき”という声をあげていくための布石です」(前出・協会関係者)
協会が前のめりになる気持ちはわかるが、問題は稀勢の里の相撲内容だ。11月場所は3横綱を破りながら平幕3人に土をつけられた。年間最多勝にしても、白鵬が9月場所を休場したから転がり込んできたようなもの。
「上位相手に目を見張る相撲をしながら、期待がかかるとあっさり土俵を割る。だから12回も準優勝しながら優勝がない」(前出の担当記者)
そんな評判を覆すためには堂々と「2場所連続優勝」で昇進を果たすしかない。そうでなければ本当の相撲ファンは喜ばない。
※週刊ポスト2017年1月13・20日号