美しき瞬間を刻んだ永遠のミューズ・秋吉久美子(62)が、自身のグラビア写真を振り返りつつ、その撮影遍歴について語った。
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初ヌードは19歳の時です。「絣の少女」をテーマにヌードも含めての撮影とは、知らされていませんでした。千葉の九十九里浜で徐々に脱ぐ方向に撮影が進み、「あれ? 何か違うんじゃない?」と私が訴えると、現場は最悪のムードに。
私はただ、理不尽がイヤだったんです。集団で突っ走る学生運動と時代のせめぎ合いを見て、自分の考えで行動しようと決めていた70’sの若者です。当時はヨーロッパ映画がとても刺激的で、『レッスンC』ナスターシャ・キンスキーの裸体や『昼顔』カトリーヌ・ドヌーブの背中に驚き、「なんてきれい。私も皆に見せてあげたい」と、本当はやる気満々。
翌日一人で電車に乗り、仕切り直しの六本木のスタジオで撮りました。九十九里の写真とは表情がまったく違う。今から40年前、流されそうな自分を、24時間以内で主体的な立場に変えました。
次は、実はテレビのお正月特番のロケで泊まっていた、西アフリカのコートジボワールの高級リゾートホテル。プールで宿泊客たちがトップレスで日光浴をしていて、私もすっかり異国情緒に染まり、調子に乗って撮った感じのシチュエーションですね(笑い)。
渡辺淳一さん原作の映画『ひとひらの雪』がテーマの写真集では、男性へのサービスに徹しています。撮影は、「どんな女性も必ずきれいに撮る」と自負する野村誠一さん。写真選びの時に「肌が白すぎない?」と言ったら「白くてキレイじゃない」と返されて……「ああ、そういう考え方もあるのか」といたく感心しました(笑い)。
最後はローマの自然公園で撮影した写真。この写真集にはもともとヘアヌードの予定はありませんでした。でも「この写真は凄い。素晴らしい」と言われ、自らヘアヌードもバンバン選んでいた(笑い)。
世間では「女優になるために脱ぐ」とか「清純派が初めて脱いだ」とかヌードが何か手段のように取られるけど、私は時代から感動を受けて、自分の中にエネルギーがあって、素晴らしいカメラマンやスタッフに出会えたから、脱いだというだけ。
次の写真集? 可能性はゼロですね(笑い)。
◆秋吉久美子(あきよし・くみこ):1954年7月29日生まれ。静岡県出身。1972年、映画『旅の重さ』で女優デビュー。1974年、映画『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』に主演して一躍スターダムに。以後、多数の映画やドラマ、舞台に出演、ブルーリボン賞主演女優賞、日本アカデミー賞優秀主演女優賞、モナコ国際映画祭主演女優賞など受賞。2009年、早稲田大学政治経済学術院公共経営研究科卒業。映画監督やプロデューサーとしても活躍中。
※週刊ポスト2017年1月13・20日号