自分の好きな地域に寄付を行ない、その地域の人々を応援する「ふるさと納税」が人気を集めている。豪華な“返礼品”が話題になることも多いふるさと納税は、経済にどんな効果を与えるのか? かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍した赤城盾氏が解説する。
* * *
私は東京生まれなので、生まれ故郷という意味でのふるさとは持たない。魚の旨かった旅先などを思い出して自治体をいくつか選び、それぞれのホームページを検索してそこから寄付を申し込もうとした。ところが、実際の手続きの段になると、どこの自治体でも「ふるさとチョイス」というサイトに飛ばされる。
このサイトが実によく出来ていて、欲しいお礼の品をくれる自治体を手際よく全国から探し出すことができる。実質的に無料の全国名産品販売所なのである。我が家の冷凍庫は瞬く間に各地名産の干物などでいっぱいになり、予約した旬の果物の到来を心待ちにするようになった。
ふるさと納税をやってみて感心したのは、とにかく、もらったお礼の品のすべてが外れなく味がいい。各自治体が地元の優良な生産者、販売店を選んでいるおかげであろう。地方の知られざる優良品と東京などの大都市の消費者が、ふるさと納税によって結ばれた。
価格に関していえば、当地の物価を反映してか離島などの僻地のほうが寄付額に対する満足度が高く、ことに生鮮食品は驚くほど安いと感じるものがあった。今後は、お礼の品が気に入って、直接、発注して顧客となる人も増えるかもしれない。
そうなれば、地方振興政策としては大成功と評価していい。ただし、少なくとも私を例に取る限り、この制度は景気に対してはややマイナスに作用しているように思う。
食べる量が増えたわけではないから、お礼の品をもらった分だけ、他の通販サイトやデパートなどでの購入は減ったはずである。さらに、家に食べものが豊富にあるので、外食の機会も減った気がする。家計簿をつけてはいないので推測の域を出ないが、私の消費支出は減少したのではなかろうか。
ふるさと納税が経済全体に与える効果は、お礼の品の分だけの減税である。そう考えると、減税しても貯蓄が増えるだけで景気は刺激されないという説は、当たっているのかもしれない。