繊維産業が盛んな群馬県桐生市にある、明治40年創業の「松井ニット技研」は、従業員8名の小さな町工場。ここで生み出されるマルチカラーのストライプマフラー「KNITTING INN」(3万2400円・カシミヤ100%)は、ニューヨークの有名な美術館のミュージアムショップで2003年から5年連続でスカーフ部門の売上総数第1位を記録するなど、独特の配色と高い品質で、日本のみならず海外で高評価を得ている。なかでも、特に評価が高いのが、「マツイストライプ」と呼ばれる、独特の配色だ。同社代表の松井智司さんは、次のように語る。
「日本人は季節の移ろいに対する関心が高く、四季折々の植物や風景に美しさを見出し、平安時代の襲(かさね=平安時代の公家の装束の上着の下に重ねて着た衣服のこと)や、能・歌舞伎の衣装をはじめとした日本独自の配色を生み出してきました。私たちはこの日本独自の配色はもちろん、西洋の印象派の絵画など、世界中のアートの色遣いを参考にしています。トレンドカラーも大切にしながら、数十もの色合わせで試作。全社員で検討を重ねて毎年新しい配色を発表しています」
色遣いとともに高評価を得ているのは、首元をやさしく包み込む、やわらかな肌触り。これは、昭和30年代から使用している旧式のラッセル編機から生み出される。
「私はこの編機が大好きなんです。回転速度がゆっくりなので、一般的な編機の5倍もの時間をかけて編み進みます。そのため、糸に負担をかけずにすむんです」(松井さん)
配色ごとに糸を手で編機にセットしなければならず、色数が多いほどコストがかかるが、よいものを作るための“必要な手間”だと松井さんは言う。編み上がった立体的なリブ編みは、空気をたっぷり含んで保温性が高く、ふんわりして弾力がある。首元に暖かさと華やかさを添えてくれるマフラーだ。
※女性セブン2017年1月19日号