女性セブンのアラカン名物記者“オバ記者”こと野原広子が、世の中の不条理にメスを入れる! 今回は、かつて麻雀にハマったオバ記者が、先立って国会を通過した「カジノ法案」について語る。
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数年前から「カジノ解禁は時代の流れ」とは聞いていたけど、本当に国会、通っちゃったね。反対? とんでもない。ここだけの話、結婚した相手との最初のデートは、船橋競馬場だもの。
30代初めに麻雀を覚えたときは、こわごわ大人のゲームに参加した私も、いつしか、温泉旅館の親父さんや、プロに交じって「ポン」。
あっという間に20年たっちゃった。あの頃は働いて得たお金はギャンブルの“種銭(たねせん)”にしか見えず、借金やら何やら、人には言えない恥と迷惑を重ね、やっと足を洗ったのは50才になってから。
で、反省と後悔をしていることも確かだけど、「楽しかったなぁ」という思いも否定できないのよ。ある時、行きつけの麻雀荘で八千草薫のような雰囲気の奥様がつぶやいたの。
「私はこれまで人にウソなんかついたことがないのに、麻雀だけは別。どんなウソをついてもしたいんです」
真夜中の2時に夫からの電話には、「うん、わかった。もうすぐ帰るから」。近所に買い物に行ってくると家を出たんだって。なのにその後、朝まで席を立たなかったっけ。
またある時は、私がボロ勝ち。知らぬ同士がお金の取り合いをしているとは思えないほど、バカ話に花が咲いたの。「ロン! 麻雀って、本当に楽しいよね」と私が言うと、誰かが「ここを出るまではね」とボソリ。
その言葉に、みんな押し黙ったのは、雀荘を出た後の自分をリアルに想像したからよ。労働と報酬とは別の次元でお金が動くギャンブル場は、この世の竜宮城。時間を忘れ、年齢も性別も忘れ、頭の中はタイやヒラメの舞い踊り。
そこで一度でもちょっと使いでのあるあぶく銭を手に入れてごらんなさいな。働いて得ても、丁か半かを当てても1万円って、小さな経済革命をなし遂げたような気分よ。お金を稼ぐ大変さを知っている人ほど、あぶく銭の軽さがうれしいのよ。 だから言いたい。カジノを作るなら、国は寝た子を起こして、これから社会に出る中高生にギャンブルの本質を本気で教えてほしいと。
ギャンブル依存症がどんなに悲惨かなんて、怖さばかり強調したってダメ。「なら、やる」と強く思う子が必ずいるもの。
楽しいから人生を破壊させかねないほど怖い。怖いから楽しい。この両面を伝えないとカジノは、入り口をショッピングモールだの遊園地でカモフラージュした、たちの悪い場所になるだけだよ。
ところでこの難しい教科書はどうする。担当は文科省? それとも厚労省かしら。いずれにせよ、ギャンブルで身を持ち崩す寸前、行くところまで行って、死の淵をのぞいた議員さんや公務員さんが社会貢献する絶好のチャンスなんだけどな。
※女性セブン2017年1月19日号