『笑点』(日本テレビ系)の視聴率がよいと景気が悪くなる、広島カープが強い年は名目GDP成長率が高い──。こうした一見、関係なさそうな事象がなぜ相関するのか。それを解き明かしてくれるのが、「ジンクスの達人」として知られるエコノミストの宅森昭吉氏。宅森氏が、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)と日本株の相関について解説する。
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政府や日銀がどんな政策を打ち出しても、現実の経済を動かしているのは市井の人々による日々の営みだ。国民のマインドは景気や株価に少なからぬ影響を与えており、数多くの景気の「ジンクス」が偶然とはいえない確率で景気動向や株価と一致している。
たとえば、人気の高いスポーツイベントが株価を動かしたケースは少なくない。2017年3月には4回目となるWBCが開催されるが、注目度が高い同イベントでは過去の大会でもこの傾向が顕著だ。
王貞治監督率いる王ジャパンが初代王者となった2006年の第1回大会では、約3週間にわたる大会期間中に日経平均株価は832円上昇した。さらに2連覇を果たした2009年の第2回大会では1054円も上昇した上に、平日の日中に行なわれた韓国との決勝戦では日経平均が試合運びと連動している。
中盤までの緊迫した展開では株価は横ばい、9回裏で同点に追いつかれると急落しその日の最安値をつけた。ところが延長10回表で日本チームが優勢に転じるとそこから株価は200円以上上昇し、金メダル授与の瞬間にその日の高値をつけたのだ。
これに対し、3連覇を逃した2013年の第3回大会では、勝ち進んでいた期間は954円と順調に上昇したものの、ザラ場中に敗退した準決勝の日は340円もの下落に見舞われてしまった。
小久保裕紀監督率いる第4回大会の出場メンバーはまだ決まっていないが、もしメジャーリーガーが参戦したり、日本球界を代表するスターに成長した大谷翔平選手が投打に活躍して世界一を奪還するようなことがあれば、3月の株価を大きく押し上げる可能性もあるだろう。
【PROFILE】たくもり・あきよし:さくら証券、さくら投信投資顧問のチーフエコノミストを経て、現在は三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミスト。ESP景気フォーキャスト調査委員会(日本経済研究センター)委員、景気ウォッチャー調査研究会(内閣府)委員。著書に『ジンクスで読む日本経済』など。