30年ぶりに重~い腰を上げ、板をはいたのは2年前。だが、雪山は想像以上に寒く、足は踏ん張りがきかず。たった1本滑って温泉へドボン。このまま敗退するか…。「いんや!」と、還暦目前に、むっくり立ち上がり、オバ、日帰りスキーにいざ、行かん。女性セブンの名物記者・オバ記者(59才)が綴るリターンスキールポ――。
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オバがスキーを始めたのは茨城の高校生のとき。町の青年団に誘われて、夜のスキーバスに乗ったのよ。
あれから毎年、冬が来るのが楽しみでね。スキー板をローンで買って夜行バスに乗って。直滑降、斜滑降、ボーゲンと順調だったのはここまで。急斜面で足をそろえるパラレルがどうしてもできなくてさ。
それに夜行のスキーバスで着き、寝不足のまま滑るから、足首をねん挫してね。トイレだって洋式じゃないし、おしっこするだけで決死の覚悟よ。と、スキー昔話が始まったところで、北陸新幹線は「軽井沢~」。「ヒールで来る人もいます」という、軽井沢プリンスホテルスキー場営業リーダーの中西剛さんの言葉を真に受けて、スカート、手ぶらで来ちゃったけど、大丈夫かしら。
すでにゲレンデには色とりどりのスキーウエアが滑り落りていて、それを見て、オバもまだまだ滑れるような…。
「ここ数年、『若いころ滑ったのよ』という中高年のお客様が増え、当社でも毎週水曜日はシニアデー。午前中、さーっと滑ってさっそうと帰って行く人もいます」(中西さん)
白銀のゲレンデでシュプールを描く青春を再開させたのは、オバだけではないみたい。
もし丸1日、休みがとれたらどうするか? 何も持たずにふら~っと新幹線に乗って、買い物するか温泉入るか、スキーにするか…。駅に降りてから決めよう、ってそんな時代になったのね。
スキー場で借りられないのは、ゴーグルと手袋と帽子だけ。それだって売店で売っている。この便利さ。重い板をかついで、駅の階段をえっちらおっちら上った昔の自分に教えてあげたいわ。
リターン・スキーヤーが、絶対にしてはいけないこと。それは、ゲレンデを見た途端、興奮してリフト乗り場に突進することだ。気持ちは20代の昔に返っても、体はあっちこっちにガタがきていて、気の若さではどうにも埋めきれない。
そこで、オバが選んだのは、プライベートスクールに入ること。2時間で1万8000円と少々値は張るが、これが大正解。準備体操からはじめて、スキーに体を慣らしながら、滑る感覚を丁寧に思い出させてくれるので、自分のレベルに合わせて最も早く、確実に安全に上達することを実感。
つい板先が気になり下を見てしまうオバに、「ぼくを見て。顔を上げてぼくを見て」だって。これよねぇ~。雪より白い歯の先生にこんなこと言われたら、長年、冬眠していた私の中の何かが大はしゃぎ。恥ずかしいほど体が軽いの。
しかしイケメン効果には限界が。無理をしすぎたせいか、東京に帰ったら1週間、体がバラバラよ。でもすぐまた行くから、先生、待っててね。
※女性セブン2017年1月19日号