離婚をすることになった場合、考えなくてはいけないのが子どもの親権。これを巡ってモメることも少なくないが、親権を共同で持つことはできるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
離婚協議中です。娘がひとりいるのですが、親権は妻になるだろうと諦めていたところ、外電で「ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが共同親権で話し合い中」と知り驚いています。日本でも共同親権という制度はあるのですか。また、共同親権が認められる場合、どんな条件が必要となりますか。
【回答】
わが国には、離婚した夫婦の共同親権は法的に認められていません。ご質問のとおり、諸外国の中には子供が両親双方に触れ合い、慈しまれる権利を持ち、親も平等に子供の養育をする義務を負い、かつ子と接することができるように、夫婦が離婚した後も、あるいは婚外子の場合であっても、父母が親権を共同して持つ制度になっているところがあります。
国によっては、未婚の父親が親権宣言をすることで、母親と共同親権を持ったり、離婚のときに単独親権の申し立てがあって裁判所が認めた場合を除いては、当然に共同親権が継続する制度もあります。
この点、日本の民法は819条1項で「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない」とし、2項で「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める」と規定して、離婚した夫婦の共同親権を認めていません。
一方の元配偶者が親権者になると他方当事者は、子供の養育費の負担をする義務はありますが、子供との接触は、子の監護の方法として認められる面会交流で実現できるだけです。
その一方、親権者となった親は、子の監護と教育(身上監護)をする義務を負い、権利を持つことになります。また、親権者は財産上の管理についても子に代わって行なうことができます。
このように、親権には2つの機能があることから、共同親権とは性格が違いますが、子供の年齢や両親の能力などを勘案し、一方が身上監護を行なう監護者になり、他方が監護権を除いた親権を持つといった対応も可能です。
そして、いったん親権者が決まっても、親権の行使の実態が子供の福祉にかなわず、利益に反するときは親権者の変更を家庭裁判所に求めることができます。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年1月13・20日号