2016年度上半期の貿易収支は2兆4000億円余りの黒字となり、東日本大震災の影響が本格的に表れる前の水準まで回復した。そのような状況のなか、2017年のドル/円相場はどのように動くのか? バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏が解説する。
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ドル/円のチャートを見てみると、大きな下落の可能性を孕んでいることがわかります。ドル/円は月足で見ると「ヘッドアンドショルダー」の形成過程にいます。ヘッドアンドショルダーとは、真ん中に頭(ヘッド)があって、左右に肩(ショルダー)があり、完成して下にブレイクすると、頭と肩の高さ分だけ下がるという、非常にポピュラーなチャートパターンです。
2014年に9か月かけて、100~106円近辺のレンジ相場によって左肩を作り、2015年いっぱいでヘッドを作り、そして今年の7月から、2014年とほぼ同じレンジ水準で右肩を形成しようとしているものと見ています。従って、左肩と同じぐらいの9か月で右肩を形成するとしたら、2017年3月頃に右肩が完成し相場は動きだすことになります
もちろんこれはあくまでも見通しであって、もっと早目かあるいは、もっと遅いかは、実際にマーケットを見て判断していくものであって、杓子定規に決められません。
「頭と肩の高さ分」が「肩から下がる」というのが、このチャートパターンのターゲットですが、今回の場合ざっくりと、頭は125円、肩は100円とすると、100円-(125円-100円)=75円ということになります。つまり、今回の上昇相場が始まる前の2011年の水準まで、相場が戻ることになるということです。
日本の貿易収支の黒字化により、実需のドル買いによる相場の下支えは期待できず、むしろGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)をはじめとする機関投資家が、外債投資でドル売りヘッジをしていないだけに、急落ともなれば、パニック売りが出るリスクが高いと思えます。
教科書的には、右肩が形成すると下がると言われていますが、このチャートパターンはポピュラーなため、多くのマーケット参加者が売ってくると、極短期間でマーケットはショートとなり、いったん反発する可能性も注意です。
さらに申し上げれば、絶対に下とは限りませんので、その点もマーケットを見ながら判断していかざるをえません。反転するとしたら、頭と肩の高さの倍、つまり100円+(125円-100円)×2=150円がターゲットになります。ただし、貿易収支も黒字に戻っていますので、150円方向は現実的ではないと個人的には考えています。
GPIFに限らず、100円に近づくたび、円高を警戒している政府・日銀の姿勢も鑑みると、円高に向かわれると困る人々が多いということを意味しているでしょう。経験上、相場とは“人が嫌がる方”に向かうものです。