《〈自分に似合って、痒くなく、痛くもない服〉それが、昨今の私の服選びの基準となった》
《「二十五年も三十五年も、そう変わらない」そんな風に感じてしまう人間になってしまったのだ》
女性セブンで『恋する母たち』を連載中の柴門ふみさん(59才)が昨年12月に上梓した『老いては夫を従え』(小学館)が話題になっている。
今年、還暦を迎える柴門さんが「老い」を受け入れていくエッセイだ。自身だけでなく、夫で漫画家の弘兼憲史さん(69才)とのエピソードもたくさん紹介されている。柴門さんに「老い」、そして夫とのつきあい方について聞いた。
同著は『本の窓』(小学館)で2012年11月~2016年5月号まで連載されたエッセイをまとめたもの。
「50代半ばからはじめた日常エッセイの連載でした。その当時、“どんどん老いていく”ということが自分の中で大きなテーマになっていたので、自然と“老い”についてのエッセイになりました。タイトルは、『老いては子に従え』ということわざのパロディーです。私の同級生は、旦那さんがすでに定年退職していて、もう本当に従えている感じなので(笑い)」(柴門さん)
『老いては夫を従え』には思わず声を出して笑ってしまうようなエピソードが多いが、命について考えさせられる話も収録されている。
柴門さんは、2010年に初期の乳がんにかかり、手術を受けている。そのときの気持ちについて、こう振り返っている。
《まず死の恐怖。次に、手術の恐怖。そして最後に乳房を失う恐怖、である》
「乳がんにかかったときに、一瞬、人生の終わりが見えたんですね。それで自分が死ぬ場合のシミュレーションを5年ごとに考えるようになりました。65才で死ぬ場合、70才で死ぬ場合、75才、80才と、5年ごとに区切るんです。今は、65才で死んでもいいような日々を60才から過ごしていこうと思っています。
65才をクリアしたら、じゃあ、次は70才で死ぬ場合をシミュレーションをして、それを実践していこうかなと思っています。65才で死ぬバージョンは、『恋母』(女性セブンで連載中の漫画『恋する母たち』)をきっちり終わらせて、世界美術館めぐりの旅に出たい。この2つは絶対にやりたいですね。
ちなみに、子供には一切期待をしないことにしています。期待してしまったら、自分の期待どおりにならないと、がっかりするじゃないですか。それって、親が勝手に期待してることだから、子供に失礼だと思うようになったんです。だから、老後を見てほしいと期待しません。“家で倒れたら救急車を呼んでね”ぐらいかな」(柴門さん)
※女性セブン2017年1月26日号