トランプ次期大統領の米国ならば北朝鮮との劇的な接近があり得る、と元外交官で前衆議院議員の村上政俊氏は読む。中国が北朝鮮を支えられなくなれば、北朝鮮が新たな事大の相手先として米国に急接近する可能性は高いという。
* * *
トランプ大統領によって“中国大包囲網”が実現した際に、北朝鮮が中国を裏切るというのが二番目のシナリオだ。「現代のツァーリ」プーチンはトランプを才能ある人物と述べたのに対し、トランプはプーチンをオバマよりも優れた指導者だと称えており、トランプが大統領に就任して真っ先に打ち出すのは米露関係のドラスティックな改善だろう。
そもそも米国における伝統的な安全保障観ではロシアが米国にとっての最大の脅威と位置付けられており、米国の安全保障専門家からはトランプのプーチンに対する宥和姿勢にかねて疑問符が付けられていた。
しかしそこは大実業家のトランプだ。思惑なしにプーチンに対して一方的に譲歩しようということではなかろう。
一つの可能性として考えられるのが“中露分断”だ。プーチンと習近平がいまのところガッチリとタッグを組んでいるのは、米国主導の国際秩序を打破しようという大戦略が一致しているからだ。しかし、冷戦期には中ソ対立という東側陣営の内輪揉めの歴史があり、現在もシベリアへの中国人大量流入など、表面的には蜜月にみえる中露にも地雷は数多い。
トランプがこれまでの米国の安全保障観を転換し、中国を最大の脅威と考えているとすれば、プーチンへの接近とその先に見据えているであろう“中露分断”が全て一本の線で結ばれる。