香港における中国政府代表機関、中央政府駐香港連絡弁公室の警察・警備部門である警務連絡部長に中国公安省国家保衛局長など歴任した李江舟・同省香港澳門(マカオ)弁公室主任が就任することが明らかになった。米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」が報じた。
公安省の国家保衛局の主な任務はデモや暴動、騒乱事件などの取り締まりであるだけに、中国政府が香港の民主化運動や独立運動を極めて重視していることが背景にある。また、7月1日は香港返還20周年の節目の年で、習近平国家主席が祝賀行事に出席するために香港を訪問する予定で、式典などの警備態勢を強化する狙いがあるとみられる。
新たに警務連絡部長に就任する李氏は中国内陸部の安徽省出身の48歳。中国人民公安大学偵察科を卒業後、公安省に入省。北京市公安局や河北省保定市で公安部門担当の副市長、国家保衛局長などを歴任。同局は暴動鎮圧などが担当で、これらの治安維持予算は国防費よりも多いといわれている。
その後、香港マカオや台湾部門なども経験し、今回の同弁公室警務連絡部長に就任することになった。国家保衛局長と務めた幹部が香港に派遣されるのは極めて異例で、「中国政府が香港の治安維持を高度に重視していることの現れ」と博聞新聞網は報じている。
香港では2014年に学生を中心とする民主化運動「雨傘運動」で、3カ月以上も市街地が占拠され、市民生活にも大きな影響が出たほか、若い層を中心に反中感情が強まっている。
さらに、中国内に持ち込むことが禁止されている中国指導部のゴシップなどを集めた「禁書」を出版・販売する書店主や書店のオーナーらが中国内で逮捕されたことに対して、市民の間で反中運動が発生。いまでは公然と「香港独立」を叫ぶ政党まで誕生している。
治安維持の専門家である李氏の香港派遣は、7月の習氏の香港訪問をにらんで、香港内の不穏な動きを封じ込める狙いがあるのは明らか。
同ニュースサイトによると、李氏は香港警察と本土の公安省の連携も担当しており、中国本土から武装警察や公安要員の派遣も検討しているという。そうなれば、返還後50年間は保証されている香港の自治や1国家2制度はまったく死文化(「意味をなさない」の意)することも予想される。