コラム

リスクコントロール型ファンド 運用会社による違いは

リスクコントロール型ファンドの特長は?

 投資信託市場ではこのところリスクコントロール型ファンドへの資金流入が続いているという。どんな特長があるのか、楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏が解説する。

 * * *
 投資信託市場で堅調に残高を積み上げているファンドもある。それは、「リスクコントロール型」と呼ばれるものだ。価格変動リスクを低減させるために、市場動向に応じて投資資産の組入比率を機動的に変更するファンドのことで、簡単にいうと、運用資産を「減らさない」ことに主眼を置いている。

 販売当初は苦戦が続いたがこのところ再び注目されているのは、運用が始まって約3年以上経ち、トラックレコード(運用実績)が整ってきたと同時に、その間、ファンドが目指すところの、安定的な収益を継続して生み出してきたからだ。加えて、アベノミクスがひと段落し、株式市場が伸び悩んでいることや、マイナス金利が常態化しつつある金融市場において、リスクコントロール型が生む収益の価値が相対的に上がっている、という背景もあろう。

 実は、リスクコントロール型といっても、運用内容はファンドごとに大きな違いがある。

 例えば、アセットマネジメントOneの『投資のソムリエ』は、国内外の株式や債券など8つの資産に分散投資し、毎日、それぞれの相場の動向を判定する。下落の危険性が高まったと判定したときは、組み入れている資産をリスクの低い安定資産や現金などに機動的に入れ替え、ファンドの基準価額の下落の抑制を図る。

 こうした機動的な入れ替えは、『投資のソムリエ』の場合、クオンツ運用によって行なわれている。クオンツ運用には明確な定義はないが、運用の世界では「数量的な分析に基づく投資手法」のことを指し、分析をしたコンピューターが売買を指示するケースがほとんどだ。

 また、ファンドの価格変動リスクを年率4%程度に抑え、安定的な基準価額の上昇を目指すことを明記している。この価格変動リスクの数値を明確にする点が、リスクコントロール型の特徴の1つといえる。

 また、ピクテの『クアトロ』は、さまざまな資産に分散投資をし、機動的な資産配分をするところまでは他のリスクコントロール型と同じだが、投資先の資産に「オルタナティブ」が含まれている点がポイントだ。

 オルタナティブとは、株式や債券といった伝統的な資産への投資とは異なる、代替的な投資手法のこと。割安と判断される資産を買い建て、割高と判断される資産を売り建てる『ロング・ショート戦略』といったものがあり、ヘッジファンドなどでも使われている。ピクテは、長年にわたる年金運用などを通じて、オルタナティブ投資のノウハウを蓄積しており、それが活かされているといえるだろう。

 このように、リスクコントロール型ファンドといっても、運用会社によってリスクを低減させる手法には違いがある。

 リスクコントロール型は、一見、分散投資をする点においてバランス型ファンドと運用内容が似ている印象がある。しかし、一般的なバランス型ファンドは、投資配分の比率の見直しは、年1回あるいは2回程度となっているケースが多い。そのため、昨今の目まぐるしく変動する相場環境においては、分散投資の効果が発揮されにくくなっている面がある。リスクコントロール型は、機動的な配分比率の変更によって、そうしたマイナス面をカバーしている。

 バランス型ファンドを購入する人には、リスクを抑えて、安定的な収益を得たいというニーズが強い。今後、そうしたニーズに応えるファンドとして、リスクコントロール型がバランス型に取って代わる、有力な選択肢となっていくのではないだろうか。

マネーポスト2017年新春号

関連キーワード

トピックス

学生時代は、練習や授業の合間におむすびを食べていた
(写真/AFLO)
《おむすびアンバサダーに就任》大谷翔平、CMオファー殺到で“撮影は1社2時間”の新ルール ファミマCM撮影では「2時間でおむすび19個を爆食い」のハードワーク
女性セブン
「BTS」のメンバーで、とりわけ高い人気を誇るジン(写真/AFLO)
BTSジンに“奇襲キス”50代日本人ファンに出頭要請 韓国当局が引き渡しを求めれば日本政府は応じる可能性、「ジンさんが処罰を求めるかどうかが捜査に影響」と弁護士解説
女性セブン
テレビ東京を退社した福田典子アナ
【独占インタビュー】元テレビ東京・福田典子アナ「退社と離婚」を初告白「広報をしていた会社を辞め、今は夫と別々の道を歩んでいます」
NEWSポストセブン
殺人などの罪に問われた内田梨瑚被告、小西優花被告(SNSより)
《小西優花被告に懲役25年求刑》「どうせ捕まるなら死なせたほうがいい」「こいつイカれてますね」内田梨瑚被告が主張した“舎弟の残虐性”と“供述のズレ”
NEWSポストセブン
1番打者に指名されたドジャース・大谷翔平とカブス・今永昇太の日本人対決で開幕する(写真/AFLO)
【3.18ドジャースvsカブス開幕戦の見どころ】侍対決は「配球」と「駆け引き」に注目、今永昇太の高めストレートに大谷翔平がどう反応するか
週刊ポスト
女優・杉咲花(27)を起用したサントリージン「翠(SUI)」の広告の“改行位置”が話題となっている
「改行するところおかしくない?」サントリージン「翠(SUI)」新広告のデザインに疑問の声が殺到、同社広報部が真意を明かす
NEWSポストセブン
デビュー10年を迎えた今田美桜
【次期朝ドラヒロイン】俳優・今田美桜が語る「悩むことも必要なこと」 劇場版『トリリオンゲーム』では15cmのヒールで「“キリカ筋”が引き締まった」秘話も
週刊ポスト
”点検商法”で逮捕された斎藤大器容疑者(33)。”トクリュウ”のリーダーである可能性もあるという(本人SNSより)
《トクリュウ逮捕》「財布の分厚い現ナマを見せつけ」「“やれそうな子”以外にはケチ」6億円豪邸にロールスロイス…「富豪アピールSNS」の斎藤大器容疑者(33)が夜の街で見せていた“素顔”
NEWSポストセブン
殺人などの罪に問われた内田梨瑚被告、小西優花被告(SNSより)
《旭川女子高生殺人・公判》「マリファナ運んでる」「リコの体に合うの」共犯者に“黙秘指示” もした内田梨瑚被告(22)の“イキリ系素顔”と“薬物アピール”
NEWSポストセブン
第5子妊娠を発表した辻希美
《逆転した夫婦関係》辻希美が第5子妊娠発表前の一家総出ファミレス、全身黒ゆるジャージで寄り添う夫とのペアルック 明かしていた「もう一度子どもを育てたい」の想い
NEWSポストセブン
結婚発表の前日、夫婦水入らずで”映画デート”を楽しんでいた筧美和子(30)
【筧美和子が結婚】「肩を抱かれ、頬にキスを…」真っ赤なニットで大胆に、イケメン経営者との結婚発表前日“映画デート”一部始終
NEWSポストセブン
倉庫内に保管されている政府の備蓄米(時事通信フォト)
今も続く「令和の米騒動」 一攫千金を狙って買い込んだ”転売ヤー”たちの嘆き「SNSやフリマアプリでもほとんど売れない」
NEWSポストセブン