高校の同級生が集まる、新年会を兼ねた年に1度の同窓会。交代で持ち回りをしている幹事が、今回は70才の清田幸子さん(仮名)に回って来た。予算1万円以内でどれだけみんなに楽しんでもらえるかが、幹事の腕の見せ所。昼間はホテルの宴会コースでおいしいものを食べてちょっとお酒を飲み、そのあとカラオケに流れるのが定番だ。清田さんはこの日のために『恋ダンス』も覚えたし、新しいマフラーも購入した――。
今、同窓会の需要が高まっている。同窓会の幹事を代行している『笑屋』の取締役・八木誠さんは「東日本大震災の翌年あたりから、徐々に同窓会の熱が上がり始めた」と指摘する。
「同窓会に関する問い合わせは毎年130%ずつ増えています。とくに65才以上の同窓会は、毎年の恒例行事のように定期化されています。2011年の震災を経て、人との絆を大事にしたいという気持ちが人々の間で高まったことが一因だと思います」
年を重ねるほど、自分の人生の限られた時間で懐かしい人に会いたいという思いは強くなる。実際、清田さんのように、70代で同窓会に参加する人の割合は、下の年代に比べてかなり高い。旅行サイト『ゆこゆこ』調べによると「1年以内に同窓会に参加した」と答えた人は50代が24.8%であるのに比べ、70代以上は62.2%だった。
「仕事がある40~50代は、土日の昼間の時間に同窓会を開催することが多いですが、シニアは、平日昼間の開催が圧倒的に多く、人数やメンバーも固定化されています。恒例行事になりマンネリ化するので、いつもと違う同窓会をしたいという要望もいただきます。同窓会旅行の企画を支援したこともありますし、西武鉄道とコラボして、列車を貸し切り宴会する“同窓会列車”の問い合わせも増えています」(八木さん)
もう次は会えないかもしれない――そんな思いも、シニア同窓会が急増する一因だ。だからこそ、ただ盛り上がるのではなく、一人ひとりと向き合い、じっくり話す時間を大切にする。
5年ほど前から「同窓会・同期会向けプラン」を企画するニューオータニイン札幌では、シニアの利用が7割を超える。
「お年を召したお客様は、おしゃべりが中心で、お酒をそんなに召し上がったり、お料理をがつがつ食べたりすることもありません。席を立ってお話しすることが多いので、2時間コースでは足りず、多くは3時間コースをご利用になられます。他の年代に比べると、当日に体調不良で急遽欠席されるかたも珍しくなく、去年は来られたけれど今年は…というお話を伺うこともあります」(ニューオータニイン札幌)
年々伸びているといわれる健康寿命だが、男性は71.19才で女性は74.21才。次に同窓会が開かれる時に自分が健康でいられる保証はないし、もしかしたら妻や夫が病気になってしまって、気軽に出かけられない可能性だってあるのだ。
※女性セブン2017年1月26日号