深い藍色で、長い注ぎ口を持つ優美な酒器「藍色ちろり」をご存じだろうか? これは、江戸時代の吹きガラスの最高傑作の1つといわれる「藍色ちろり」を現代風によみがえらせたもの。
製造元の「副島硝子工業」(佐賀市)のルーツは、嘉永5年(1852年)に佐賀の鍋島藩に設置された精錬方(せいれんかた)という、科学技術の研究所までさかのぼる。現在、「肥前びーどろ」を製造する唯一の工房だ。
「なんとか復刻できないか、という声を各方面からいただいていました。それで“ジャッパン吹き”を継承する工房としての使命を感じ、約20年前に制作を始めました」
と、同社代表の副島太郎さんは、当時を振り返る。ジャッパン吹きは、金型を使わずに成形する、宙吹き技法のひとつ。
「一般的な宙吹きには、鉄製の吹き竿を使いますが、こちらはガラス製の竿を使い、溶かしたガラスを竿にとって息を吹き入れて形作ります。表面に空気以外のものが触れることが極端に少ないので、よりなめらかな肌合いと、独特の艶が生まれます」(副島さん・「」内以下同)
注ぎ口があるタイプの“ちろり”と“かんびん”は、2本の竿を同時に使う“二刀流”という特殊な技法で作る。
「一見、細長い注ぎ口を作るのが難しいように見えますが、“二刀流”そのものがかなり難しい技法で、優雅な曲線を描く胴体やふた、すべての形状を作るのに高度な技術が必要です。当時の職人も苦労していたようですが、私たちも第一弾が完成するまでに、約2年かかりました。そこから20年の間に少しずつ改良を重ねて、現在の『藍色ちろり』があります」
人気の品だけに、数か月待ちになることもあるが、佐賀県のふるさと納税の返礼品にもなっている。
※女性セブン2017年1月26日号