昨年12月、米国の大手投資会社のレポートが世界の投資家の注目を集めた。そこには以下のように書かれていた。
〈円安、世界経済の改善、企業収益の上昇見込みを好感し、日本株の投資判断をオーバーウェイトとする〉
投資用語でオーバーウェイトは「強気」を指す。この会社はおよそ9か月ぶりに日本株の投資判断を「ニュートラル」(中立)から「オーバーウェイト(強気)」に引き上げたのだ。
この会社は“ウォール街の巨人”と呼ばれるブラックロック。日本人にはあまり馴染みのない社名だが、どんな会社なのか。ブライアン投資顧問の畠添武士氏が解説する。
「ブラックロックは1988年に証券会社ファースト・ボストン出身のラリー・フィンク氏によって設立されました。リーマンショック後、米メリルリンチと英バークレイズから運用部門を買収し、世界最大の資産運用会社に成長しました。世界中で株や債券などを幅広く運用し、グループ全体の運用資金残高は総額5.1兆ドル(約518兆円)に達します」
日本のGDPに相当する超巨額の運用額を誇る同社は日本国内での運用額もケタ違いだ。
「2年前の調査では、ブラックロックがグループ全体で保有するTOPIX500社の構成銘柄の評価額が約10兆7680億円に達した。これは日銀の保有する日本株に匹敵する巨額の運用です。同社は日本経済全体の“大株主”のような存在であり、市場に与える影響力は絶大です」(同前)
実際、ブラックロックが5%以上の株式を保有するとして提出した「大量保有報告書」を確認すると、3大メガバンク、三井物産、伊藤忠商事、大和証券G、マツダ、ニコン、JXHDなど、日本が誇る一流企業がズラリと並ぶ。
※週刊ポスト2017年1月27日号