2年前『SAPIO』でフランスの極右政党「国民戦線」創設者のジャン=マリー・ルペン氏は「今日の仏社会は、基本的安全さえも犯されている」と嘆いた。2015年、同国ではテロが相次いだ。娘のマリーヌ氏が2017年仏大統領選の有力候補として注目されるなか、ジャーナリストの宮下洋一氏が、改めて同氏に欧州の危機を聞いた。
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いまフランスは、治安、失業、財政の危機に直面している。その問題がどこから来ているのか、国民は十分理解しているはずだ。
人口を維持するには合計特殊出生率が2.1人以上でなければならない。だが(1970年代後半から)それを大きく下回るようになった。特に高齢者が増加する中、労働人口ばかりが減少している。だから、その不足分を移民に頼った。たとえ移民であっても、社会システム、宗教、行動規範を乱さなければ、何の問題も生じない。この国には、中国移民が100万人いるが、彼らの存在は目に見え難く、社会問題の対象にならない。
だが、力ずくで社会を挑発する移民がいる。具体的に言う。ムスリム移民である。いまやマグレブ諸国(北西アフリカ諸国)だけでなく、トルコからも流入している。母国のイスラム諸国で過激派が活動すれば、必ず呼応するムスリム移民がでてくる。それは、私が2年前に予言したことだった。
ムスリム移民との共存はもはや難しい。宗教や歴史は異なり、ジハードのように死を覚悟した〝カミカゼ〟は終わらず、常に問題が起き続ける。解決策は見つからない。われわれの文明を脅す侵略者たちに対しては、軍隊が有効だった時代がある。しかし、今日の(内なる)侵略者たちに対しては、軍隊という形で片付くものではなくなった。
いまこそ変化が必要だ。
●Jean-Marie LE PEN 1928年生まれ。パリ大学卒業。戦後最年少の27歳で仏国民議会の議員当選。その後、休職しアルジェリア戦争に従事。1972年、仏「国民戦線」(FN)を創設。2002年の大統領選では、泡沫候補とみられていたが、犯罪に対する社会不安から票を伸ばし、シラク氏との決選投票まで残る。当時、「ルペン・ショック」と呼ばれた。
※SAPIO2017年2月号