年始から安倍晋三首相は、解散をしたいのかしたくないのか、どちらともとれる発言を出したり引っ込めたりを繰り返している。そのたびに議員も新聞記者も右往左往し、安倍首相もまるでその様子を楽しんでいるかのようだ。こういった動きに便乗して解散風を2倍にも3倍にも煽っているのが自民党実力者たちだ。
筆頭は77歳の二階俊博・幹事長と76歳の麻生太郎・副総理の長老組。二階氏は昨年秋にいち早く若手に選挙準備を指示して風を吹かせた張本人で、その後、「ある」「ない」と発言をコロコロ変えながら、今年に入ると「本当のことを言うわけがない。企業秘密」とダンマリ。
麻生氏は昨年末、官邸で安倍首相に「総選挙をすれば20議席は減らすかもしれないが、先送りすればもっとひどくなるかもしれない。(経済が上向いているうちに)やった方がいい」と1月解散を進言した。
自民党内では、首相時代に解散を先送りして大敗した経験がある麻生氏ならではの忠告と受け止められているが、2人の共通の思惑は別にあるようだ。
「麻生さんは長男、二階さんには次男という後継者が控えているが、まだ選挙区に十分に浸透していない。早期解散なら二階さんは幹事長として選挙を仕切り、麻生さんも現職副総理として出馬するだろうが、年齢を考えると、解散が先送りされれば次の総選挙での引退が現実味を帯びる。せめてあと1期、80歳まで現役を続けるうちに息子に確実に地盤を譲りたいという思いがあるから、早く選挙をしてほしい。派閥の子分たちもいま親分に引退されたら困る」(自民党ベテラン)
来年9月の自民党総裁選がらみで早期解散を唱えているのは、「1月解散は十分ある」と語った石破茂・元幹事長らポスト安倍世代。
総裁選出馬に意欲を表明した岸田文雄・外相も解散推進派と見られている。こちらも早く選挙をやってもらわないと困る事情があるという。岸田派議員の話。
「来年9月の総裁選で安倍総理の3選は確実だが、重要なのは岸田さんと石破さんの2位争い。我が派はそこで石破さんに差を付けて岸田さんをポスト安倍の一番手にしたい。岸田さんもそのつもりで麻生派との派閥合併話を進めている。ところが、解散が来年までずれ込み、安倍総理が選挙に勝てば、党内に総裁選を実施せず無投票で3選させようというムードが高まる。総裁選がなくなるのが一番困るんだよ。だから早く選挙をやっておきたい。石破さんも同じ考えではないか」
総裁選を確実に実施するための早期解散総選挙とは本末転倒だが、それが“自民党の論理”らしい。
※週刊ポスト2017年1月27日号