メジャーリーグ・ヤンキースの田中将大投手の肘靭帯部分断裂の治療に用いられ、話題となった自家PRP(多血小板血漿)治療。PRPは、患者の血液から取った血小板を濃縮したもので、中に含まれる組織や細胞を活性化させる成長因子で再生を促す治療だ。
1998年に歯科領域のインプラント埋入において、土台となる骨が少ない症例にPRPを用いると骨再生が促された。2003年にはアキレス腱炎の治療などにも利用されて、有効性が確認されている。
聖マリアンナ医科大学形成外科・幹細胞再生医学(アンファー寄付)講座の井上肇特任教授に聞いた。
「PRPは、濃縮した血小板に含まれる増殖因子を用いて、細胞の再生を促します。血小板の増殖因子は1種類ではなく、多種類の増殖因子の集合体(カクテル)です。このカクテルは、配合割合や量などに個人差があり、そこで患者さんから採取した血液の血小板を濃縮することで、患者さんに最適なPRPが調整でき、組織の再生を円滑に行なうことができるのが特徴です」
PRPの調整方法は、まず患者から約60ミリリットルの血液を採取する。クリーンルームで遠心分離機にかけ、遠心力を調整しながら赤血球と白血球から血小板を無菌の状態で分離する。この段階で、血小板が遊離した血漿が得られる。
さらに、この分離血漿を採取し、再び15分間遠心分離を行なう。この時に沈殿するのが濃縮血小板だ。60ミリリットルの血液から10倍の6ミリリットルに濃縮されたPRPが採取できる。このPRPを4回分に分け、1週間に1回ずつ患者に使用する。残りのPRPは、4℃の冷蔵かマイナス80℃で保存する。