75歳からが高齢者といっても、65歳で重病に罹る人もいれば、75歳を過ぎても健康生活を謳歌している人もいる。年齢と健康は必ずしも相関関係にない。特に高齢になるほど重要になるのが、実年齢では測れない「本当の健康状態」である。それを知るための新測定法が生まれている。
今年春から一部の健診センターでは健康診断や人間ドックの結果に加え、「健康年齢」という指標が受診者に通知されるという。
「健康年齢」の測定システムを開発した日本医療データセンターの健康年齢プロジェクト・ディレクター、久野芳之氏が解説する。
「健康年齢とは個々の健康状態を“見える化”した指標です。当社が蓄積する約160万人分のデータを元に、受診者の健診データから年間にかかる医療費がいくらになるかを予測し、その額が何歳に相当するものかを表わしたのが健康年齢です」
実年齢より健康年齢が高いほど、医療費の増額が想定され、疾病リスクが上がるとされる。
現実には健康年齢と実年齢が一致している人のほうが少なく、高齢者ほど両者の開きは大きくなるという。
「健康年齢」の測定には中性脂肪やHDL(善玉コレステロール)、LDL(悪玉コレステロール)、γ-GT、尿蛋白など12項目の健康診断の数値が用いられる。中でも健康年齢を大きく左右する重要な数値が、肥満度を示す指数であるBMIと血圧、血糖値の3項目だ。
前出の久野氏が説明する。
「これら3項目は、高齢になるほど重篤になる病気の要因となりやすい。血糖値やBMIの数値が高いと糖尿病や動脈硬化を誘発しますし、高血圧も脳血管や心疾患リスクに直結します。結果的に医療費もかさむことから、中性脂肪や尿蛋白などの項目の数値がいくら正常でも、健康年齢を押し上げる要因となります」
同社のビッグデータより算出した主要3項目の年齢別の平均値から実際の測定値が離れているほど、実年齢と健康年齢も乖離している可能性がある。
この健康年齢は医療保険の商品化のために考案された数値だ。
昨年6月、健康年齢で保険料が決まる『健康年齢連動型医療保険』が発売された。販売元の健康年齢少額短期保険の営業企画部長・早川宣浩氏はこう語る。
「これまで一般的な医療保険は契約者の年齢や病歴などで保険料が決められていましたが、当商品は将来予測される医療費が少なくて済むのであれば、保険料を安くできるという考え方です。実年齢だけで疾病リスクを算出するのは現実には限界があります」
この保険は18~75歳まで加入できる。毎年の健康年齢の変化によって保険料が決まる仕組みだ。
※週刊ポスト2017年1月27日号