「YouTuberなめとったらあかんど、コラァ!」──宅配便をめぐるトラブルからチェーンソーを持って三重県のヤマト運輸集配所を襲い、従業員を脅したとして逮捕された通称“チェーンソー男”。
事件以上に関心を集めたのが、彼が襲撃の一部始終を映像に収め、動画投稿サイトのYouTubeで配信していたことだった。警察の取り調べに「動画の閲覧数を増やすのが楽しみだった」と供述しており、そのための犯行だったことが窺える。
高校時代の同級生によると、「彼はヤンキーにビビっている弱気なタイプだったが、授業で裁縫している時に板ガムをミシンで縫って先生に怒られたことがあった。ちょっと目立ちたがり屋だった」という。父親もこううなだれる。
「(動画を見た)みんなにおだてられた形になり、あんなことをしてしまったんじゃないか。本当に申し訳ありませんでした」
近年、素人ながら動画投稿で広告料などを稼ぐ“人気YouTuber”が次々現われ、ネットでは憧れの的になっている。しかし同時に、彼のように問題行動によって閲覧数を増やそうとする“おバカYouTuber”も大量発生しているのだ。
昨年末は、「ツンッ、ツンッ」と言いながらコンビニのおでんを指でつついた“おでんツンツン男”や、牛丼チェーン店で紅ショウガ用のトングを使って牛丼をかき混ぜた上に丼を頭にかぶった“牛丼ぐちゃ混ぜ男”の動画が相次いで問題になった。
本誌で『ネットのバカ 現実のバカ』の連載を持つネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、彼らの行動原理を解説する。
「人気上位のYouTuberは、動画の広告収入で数千万円を稼ぎ、アクセス数も億単位に達します。そういった一握りの人に憧れ、お金を稼ぎたい人や、ネット上で視聴者に賞賛されたいという“承認欲求”を持つ人が、過激な動画を投稿することが多い。動画を見てもらうには飽きさせない工夫が必要なので、盛り上げるために、変な“サービス精神”を持ってしまうのです」
YouTuberはいまや子供たちの「なりたい職業」だそうだが、一歩間違えると「なりたくない大人」に転落する。
※週刊ポスト2017年1月27日号