「ただただ、ビビっただけですね……」──横綱・白鵬との初日の一番をそう振り返ったのは、新関脇・正代(しょうだい)である。
“万年大関”の稀勢の里、琴奨菊、豪栄道らパッとしない大関たちに代わる「日本人横綱候補」として期待を集める力士だ。
「正代は東京農大2年で学生横綱になった経験がありますが、すぐに角界入りしなかったので幕下付け出しの権利をなくし、卒業後の2014年3月に前相撲からスタート。時津風部屋に出稽古に来る鶴竜に鍛えられて力をつけ、スピード出世を果たした。入幕後は2ケタ黒星がなく、ここ1年で最も伸びたと親方衆が口を揃える力士」(相撲担当記者)
ただしこの正代、大相撲ファンにはその実力以上に“ネガティブキャラ”が浸透している。初場所初日の白鵬との一番では、立ち合いの左のど輪で体を起こされ、引き落としにあっさりと手をついた。せっかくの天覧相撲にもかかわらず決着までは約3秒。支度部屋に戻ったところで冒頭の「ビビっていた」発言である。
キャラが立っていて記事になりやすいので担当記者たちからは人気というが、ビビってばかりではファンとしては心配でもある。
「白鵬に対しては、昨年の5月場所での初顔合わせで、張り手1発で重心を失い、最後はダメ押しで土俵の下に叩きつけられた記憶が消えないのでしょう。今場所も、初日の取組相手が白鵬だと聞かされると“え~ッ”と露骨にイヤそうな顔をし、その後の囲み取材でも“頭の中で悪夢がよみがえった”と本音を漏らしていた。師匠にハッパを掛けられても“ケガをしないで生還できたらいい”とコメントするくらい嫌がっていましたね」(協会関係者)
年末に行なわれた横綱審議委員会の稽古総見でも、正代は白鵬から指名を受けて10番取ったが、まったく歯が立たず、八角理事長からも“それじゃダメだろ”と呆れられていたほどだ。
そんな体たらくでいいのか。初場所4日目に新関脇になっての心境の変化を直撃したところ、「まだ(関脇の地位にも)慣れていないもので……」とここでもネガティブ反応なのだが、これで本当に大関、横綱昇進が目指せるのかちょっと心配。
頑張って“ネガティブでも勝てる力士”を目指してほしい。
※週刊ポスト2017年1月27日号