いつからか投資の世界では、1億円以上を稼ぎ出した個人投資家のことを「億り人」と呼ぶようになったが、その下には“億り人”を目指す個人投資家たちがひしめき合っている。彼らは、いかにして資産を築き上げているのか? 田村浩司さん(仮名。50代・投資歴8年・運用金額1400万円)が、自身の投資遍歴を振り返る。
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2006年までまったく投資に興味がなく、やっていたのは会社の財形貯蓄くらい。ちょうどその頃、会社の大きな変革があり、将来不安から「自分も変わらないと」という危機感を持ったんです。それから500円玉貯金と2000円札貯金を加速させました。
2年で293万円を貯め、FX(外国為替証拠金取引)をスタート。しかし、当時はリーマン・ショック真っ只中で、相場環境は最悪。南アランド/円と豪ドル/円の買い一辺倒で80万円の負けとなり、投資初年度はほろ苦いデビューとなりました。それからはロングだけでなくショートも織り交ぜたり、通貨ごとのチャートのクセを分析するようになりました。
例えば下値支持線まで下落してきた場合、反発してボックス継続だったらロング、確実に割って下落トレンドが確認できたらショートと、状況を見極めてからエントリーすることを心がけました。これでパフォーマンスが向上し、2009年以降は年間の損益は全勝、平均年60%ほど殖やすことができています。
現在、FXで900万円くらい、投信を500万円くらい運用していますが、基本的にFXで儲けた利益は生活費や趣味の海外旅行代に使っています。一昨年は年初500万円だったのですが、一昨年と去年の2年間で700万円ほどの利益を得ることができました。その利益もほぼすべて出金して使いました。
私は海外旅行が好きなので、ヒルトンの高級コンドミニアムを1週間単位で所有できるタイムシェアプログラム「ヒルトン・グランド・バケーションズ」を350万円分追加購入したほか、車の購入に200万円、生活費に150万円ほど充てています。会社員としての給料は住宅ローンの返済に回し、残った分は老後や、万が一のときのための生活費として手をつけないようにしています。
現在50代になり、そろそろ自分の老後も考えるようになりました。厚生年金はもらえますが、退職金と、65歳までの再雇用時の給料は老後の生活費に残したい。そのために、定年の60歳までに住宅ローンの繰り上げ返済をして払い終わらせたいと思っています。
投資に興味を持ったのが40代と遅かったので、ただ稼ぐだけではなく、人生全体のファイナンシャル・プランニングが必要でした。そこで週末は投資スクールに通ったり、証券会社の無料セミナーに行って、金融リテラシーを身につけるための勉強をしています。