現在、両国国技館では大相撲の初場所が行われているが、土俵で戦う力士を縁の下で支えるのが親方夫人だ。彼女たちが表に出る機会は少ないが、相撲部屋のおかみさんたちはどんな生活を送っているのか? 5人のおかみさんに集まってもらい、話を聞いた。
貴乃花部屋(花田景子さん・52):千秋楽の打ち上げパーティでは着物を着ることが多いけど、こうやって集まったのは初めてじゃないかしら。
山響部屋(平野まなみさん・51):たまに仲の良いおかみさんたちで集まるけど、着物姿ではないしね。確かに貴重かも。
──おかみさんが集まるとどんな話を?
立浪部屋(市川美紗子さん・37):主に悩みの共有や相談です。わからないことを他のおかみさんに聞いています。
貴乃花:横の繋がりがあると、この悩みは私だけではないと安心できますね。
──その中でも一番の悩みとは?
大嶽部屋(佐藤あゆみさん・51):お金でしょう。ちょっと生々しいかな(笑い)?
湊部屋(三浦眞さん・45):いいえ、やはり経済的なことですよ。「力士は食べることが仕事」だから、やりくりには気を遣いますよね。
山響:お米の量がすごいよね。ウチはベテランが多いから少ないほうだと思うけど、それでも1回の食事で2升。
立浪:ウチは1回で3升です(笑い)。でも食事で一番大変なのは外食の時かな。食べ放題の店に「立浪部屋ですけど……」と連絡すると、「満席です」と断わられてしまうことが多いんです(笑い)。
貴乃花:「運動をやっていて、少し体が大きい子供です」とごまかしても、人数でバレちゃうしね(笑い)。
──若い力士たちはいわゆる「ゆとり」といわれる世代。難しいことも多いのでは。
貴乃花:礼儀や技能向上、ケガ防止のために親方が普段から厳しく指導しますから、心から鍛えられていきますね。それでも、親方の時代から見ると甘いみたいですね。
湊:ウチの親方は先代がすごく厳しかったので、怒鳴ることに抵抗があって叱れないそうです。それでも精一杯、叱っていますけどね。
大嶽:平等に扱っているつもりでも、用事を頼む子がいつも同じだと贔屓だといわれる。呼び方も注意しないと「なんであいつだけ“ちゃん”付けなんだ」って思われる。年頃の男の子ですから、色々気を遣います。
貴乃花:でも角界の未来を背負う子たちですから、早く力をつけて立派になってもらいたい。やはり若い子たちが成長した姿を見るのが、おかみさんが一番嬉しい瞬間じゃないかな。
(写真は左から、三浦さん=湊部屋、平野さん=山響部屋、花田さん=貴乃花部屋、佐藤さん=大嶽部屋、市川さん=立浪部屋)
■撮影/渡辺達生 取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2017年1月27日号