経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、テニスの錦織圭選手のメンタリティを分析。
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今年の錦織圭は、これまでと違う。開幕戦となったブリスベン国際で準優勝して好スタートを切ると、続く全豪オープンでも、初戦で苦戦しながらも勝ち進んでいる。
今年初めの『報道ステーション』(テレビ朝日)のインタビューで、全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権、全米オープンの4大大会、いわゆるグランドスラムでの優勝について、松岡修造に聞かれると、「すごく近くに見えている」「できるかできないかではなく、いつ実現できるかな」と、明るくにこやかな顔で言い切った。
そして「安定してプレーができてきて、粗さはだいぶ抜けてきた」と今の自分を振り返っただけでなく、松岡には、メンタルが90%までできていると語ったという錦織。
そう、今年の錦織はメンタルが違うのだ。
どこがどう違うのか。試合後の記者会見に、その違いがはっきりと表れている。
錦織選手には、もともと鼻を触ったり、髪を大きくかきあげる癖がある。なかなか思うようなプレーができず苦戦した時などは、気持ちが落ち着かないのか、この癖が頻繁に見られてきた。
試合運びが思うようにいかなかったり、対戦相手に苦手意識があった時などは、会見中、顔や首筋を触ったり、着ているTシャツの襟を触ったり、羽織ったパーカーのフードや襟を触ったり襟元を合わせたりと、頻繁に身体や服のどこかを触っていることが自然と多くなるのだ。
これは思い出したくない不愉快なことや、うまくいかなかった苦い経験、不安にさせる物事や考えなどからくるマイナス感情を緩和させ、自分の気持ちを落ち着かせよう、なだめようとする「セルフタッチ」という仕草である。
たとえ勝利しても、それが難しい試合であったならば、質問の受け答えをしながらも、後悔や反省が頭の中をめぐり、なんともいえないモヤモヤ感情が湧いてくるのだろうか。昨年の全米オープンでは、準決勝でアンディ・マレーに勝利しながらも、会見ではしきりにパーカーの襟やジップを触り、身体を右へ左へと動かしていた。
錦織は、プレッシャーやストレスに対して、意識や無意識の中で生じた不快、いらだち、動揺といったマイナス感情が、そのまま仕草になって表面に出やすい選手といえる。だから、その試合がどんなに大変だったのか、精神的にどれだけストレスになっていたのかは、試合を見ていなくても、試合後の会見を見れば、ある程度把握できた。
ところが、である。全豪オープン初戦、ロシアのアンドレイ・クズネツォフに3時間34分のフルセットで苦しめられた後の会見で、錦織は、いつもの癖をほとんど見せなかった。髪を大きくかきあげ、おでこをかく仕草をしたのは、クズネツォフのプレーについて「対応しきれなかった」と話した時ぐらいだ。