大学駅伝シーズンを通して、本誌・週刊ポストで最新情報をレポートしてきた陸上長距離専門ウェブメディア「EKIDEN NEWS」主宰者の“博士”こと西本武司氏。その独自すぎる視点に、マラソン中継の解説の際、数々のトリビアを紹介する増田明美氏(スポーツジャーナリスト)も「本当にオタクすぎる情報ばかり」と感嘆の声をあげた。増田氏は、「週刊ポストで連載していた『EKIDEN NEWS』の詳しすぎる話』はすべて読みました」と前置きし、異色対談の口火を切った──。
増田:はっきり言っちゃいますけど、あなた相当なオタクですよね(笑い)。三大駅伝(出雲、全日本、箱根)どころか「八王子ロングディスタンス(※)」みたいなマニアックな記録会まで足を運んでる。一体、何者なの? もともとは箱根を走った選手?
【※毎年11月末頃に八王子の山奥の法政大学多摩キャンパスで開かれる日本最高峰の長距離記録会】
西本:いえいえ、ただの市民ランナーですよ。陸上オタクになったのは、9年前に自宅近くの砧公園でジョギング中、駒澤大の宇賀地強・選手(2007~2010年に4年連続で箱根2区走者。現・コニカミノルタ)に抜かれた体験がきっかけです。緩いジョグに見えて“ついていけるかな”と追いかけてみたら、肉離れを起こして……。“あぁ、世の中にはとてつもない人がいるんだなぁ”と、心を奪われてしまった。
増田:宇賀地さんがきっかけなんだ(笑い)。
西本:自分を肉離れに追いやった奴が、箱根で2区を走っていたわけです。どこで彼を見られるんだろうと調べてみると、「関東インカレ」というレースに出るらしい。行ってみると観戦しているのは関係者ばかり、聞こえるのは野太い怒声ばかりという状況。
面白いから当時発売されたばかりのiPhoneを使ってネット中継をしていたら、それを見た陸上ファンの人から「私も(現場に)行っていいんですか?」とか「宇賀地は日体大(記録会)にも出場しますよ」とか色々と情報が寄せられるようになり、少しずつファンの輪が広がっていったんです。