昨年8月の刊行以来、わずか5か月あまりで46万部を突破する異例のヒットとなった『九十歳。何がめでたい』(佐藤愛子著)。この本のファンは、各界に広がっている。稲垣吾郎(43才)は「ぼくらが普段言えないようなことを代わりに言ってくれて、すっきりする」と讃辞を送り、安藤優子さん(58才)は「私も90才までに佐藤さんのような胆の据わった人間になれるよう精進したいと思います」と誓った。
意外なところでは、アイドルグループ「でんぱ組.inc」の相沢梨紗や福島瑞穂参議院議員がツイッターで本書を絶賛した他、前公明党代表の太田昭宏衆議院議員が自らのブログで〈日本人が脆弱になっている。相手にばかり気を使って、ストレスをため込んでいる。(中略)そんな時代にズドーンとストレート球を投げる。そして世の「正論」「…したらまずいんじゃない」のたぐいを打ち砕く。痛快〉などと綴った。
脚本家・橋田壽賀子さん(91才)も本書に夢中になった1人。
「ここに書かれてあることは、すべて佐藤さんご自身の経験の集約。一気読みしましたよ。私たち90代が無責任に言いたいことを、すべて代筆してもらった気分になりました。若い時分には『生意気だ』と言われかねないことも、年を取ったら許されることが多いでしょ。私が安楽死の提言をしたのだって、90才を過ぎたからです。
だからこの本の醍醐味は、存分に生きてきた者だけに許される、突き抜けたヤケクソ感にあるのではないでしょうか。私も佐藤さんも、もう充分すぎるほど仕事をしてきました。視聴率という魔物と格闘しながら、よくぞここまで生き残ってきたものだとわれながら感心しています」
手に取ったきっかけは、泉ピン子(69才)にすすめられたからだという。
「年末年始でクルーズ旅行に出かける際に、ピン子が『この本、面白いから読んでみな』って。字が大きくて読みやすいのもありがたくて。小説と違って、頭から読む必要がないのも、気楽でよかった」
佐藤さんは本書で、〈ああ、長生きするということは、全く面倒くさいことだ〉と万感を込めて綴った。そこにも橋田さんは、同世代として大いに共感したと話す。
「私も今は自宅の2階に上がるのも億劫で、出歩くのも面倒。お化粧するのも、洋服を選ぶのも面倒。つまずくのが怖いから、予防策として手押し車を使っています。転ばぬ先の杖とはよくいったものです。
私も佐藤さんと同じで、人から『お元気ですね』と言われますが、90才を過ぎると、体力の衰えというより、体が萎んでいくのを感じるんですよ。
この年になると、もう名誉もお金も要りません。私がトレーニングだけはかれこれ6年半続けているのも、自分のためですから。90代になると、自分のためだけの時間がいかに大切かが身に染みてわかりますからね」
※女性セブン2017年2月2日号