世界が日本に驚嘆の眼差しを向けている出来事がある。それは、天皇の生前退位に臨む国民の冷静な反応だった。
欧米メディアは昨年8月の天皇会見でのお気持ち表明を「現代日本では前例がない」(ロイター)、「日本では今まで考えられなかったこと」(BBC)と大きな関心を持って報じ、その後、国民のほとんどが生前退位を支持して、政府も2018年の退位に向けて粛々と法改正の準備を進めていることに、こう驚いている。
「タイではプミポン前国王の死後、皇太子の王位継承決定まで時間がかかったし、英国でも仮にエリザベス女王が譲位を表明すれば国民から賛否両論がわき起こるだろう。
日本は退位が法律で認められていないにもかかわらず、国民は退位を支持したし、与野党ともこれを政争の具にしないように努めているように見える。天皇と大統領が比較できないのは分かっているが、オバマからトランプへの政権移行に際して大規模なデモが起きるなど“ギスギスしたバトンタッチ”を見ていると恥ずかしく思えてしまうほどだ」(米メディアのアジア担当記者)
世界はこうしたところにこそ、日本という国の「安定」を見出している。
撮影/雑誌協会代表取材
※週刊ポスト2017年2月3日号