ドナルド・トランプ大統領が就任し、米国の対中国政策が大きく変わるのは、日本にとってチャンスとなる。
トランプ氏は中国の南シナ海での軍事施設建設、巨額の対米貿易黒字を激しく批判し、台湾の蔡英文総統と電話会談。中国が反発すると、「なぜ『一つの中国』政策に縛られなきゃならないのか分からない」と、得意の挑発で応じた。
「政治テーマを経済の駆け引きに持ち込むのがトランプ流。最大の対米黒字国である中国に“もっと米国製品を買え”という恫喝です。中国も本気でコトを構える気は無いから、人民元の引き上げで調整するしかない」(相沢幸悦・埼玉学園大学経済経営学部教授)
人民元高になれば中国はこれまでのように輸出で稼ぎにくくなる。それが日本経済に利益をもたらす。投資顧問会社マーケットバンクの岡山憲史氏が言う。
「今後の中国元の投資先は、円安で株価も上昇局面にある日本に向く可能性が高い。当面は、すでに動きがある通り日本の不動産を買う方向から始まる。観光需要も継続して高まるでしょう。これまで中国は日本の資金の受け皿でしたが、反対に日本が中国の資金の受け皿になるということです」
トランプ氏のドイツ嫌いも激しい。英国のEU離脱を「すばらしい結果になる」と歓迎し、「EUはドイツだ。メルケル首相は壊滅的な過ちを犯した。どこから来たかも分からない不法者を受け入れた」と難民受け入れをこきおろした。
米国当局は中国と関係の深い独フォルクスワーゲンの燃費不正事件で民事・刑事合計約218億ドル(2.4兆円)を支払わせることで合意し、安いユーロで対米貿易黒字を稼ぎまくったドイツに厳しい姿勢を取っている。また、昨年、過去最高の対米黒字をあげた韓国もトランプ氏当選後にウォン高・円安が急速に進んだ。
自動車、電機など日本の輸出産業にとって最大のライバルはドイツと韓国であり、その弱体化で日本企業がメリットを享受することは言うまでもない。
※週刊ポスト2017年2月3日号