映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、数々の大女優たちの相手役を務めてきた山本學が、共演のなかで培った自分の役割について語った言葉からお届けする。
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山本學は舞台やTBSの「東芝日曜劇場」などで、数々の大女優たちの相手役を務めてきた。
「僕ぐらい、いろいろな女優さんと共演している役者はいないと思います。山田五十鈴さん、杉村春子さん、森光子さん、当時の大女優さんはほとんど絡んでいるんですよね。
僕が意識してきたのは『目立たない』ということです。個性的な役者ではないので、出っ張った芝居はしないで相手役に合わせて、相手役をどう立てるかということだけを考えてやっていました。
でも、全く目立っていなかったら、それも駄目なんですよね。ただ、こちらの役割は基本的には『支える』ということですから、余分に目立つことはしない。すぐ目立とうとして笑わせたりしようとする人が今はいますが、僕にはとてもできません。もちろん、役割として『ここは出っ張ってくれ』と言われた時はやりますよ。相手役との関係を考えながら、そういう程合いを作るようにしています。
芝居をする時も観る時も、距離感を大事にしています。そこに心理が出ると思います。そこをどう伝えられるかを、よく考えます。最初は距離のある関係なのか、こちらは心を開いているのか。そういう距離感が画面の中や舞台の上でパッとどう出ているか。そのためには表情を変えない方がいいのか、変えるならどのタイミングなのか。
ある意味では役者というよりは演出感覚で仕事をしてきた部分はあります。ですから、僕は役者としてはあまり魅力的ではないのかもしれません」