【著者に訊け】足立紳氏/『14の夜』/幻冬舎/1300円+税
『15の夜』(by尾崎豊)ならぬ、『14の夜』である。近年、映画『百円の恋』等で脚本賞を総なめにする足立紳氏(44)の小説第2作は、自身の初監督映画(現在公開中)の原作でもある。
舞台は1987年夏、鳥取県のとある田舎町。中学生らの間に広まった、こんな噂の顛末を描く。〈来週の木曜日、ワールドのオープン1周年記念によくしまる今日子のサイン会がある。夜の12時を過ぎると、オッパイを吸わせてくれるらしい〉!?
ワールドは町唯一のレンタルビデオ屋、よくしまる今日子は巨乳のAV女優のことで、初体験など程遠く、練習よりエロに夢中な弱小柔道部の〈タカシ〉たち4人組は気もそぞろ。〈オレら……この先の人生で、女のオッパイ思いっきり揉みまくれること……あるかな〉。だから彼らはゆく。今日子のオッパイが、自分を変えてくれると信じて!
「実はこれ、噂自体は本当にあった話で、僕も行きました。当時大人気だったかわいさとみさんに会いに(笑い)。でも結局は誰も来なくて、夜の町をウロウロして……。その経験が面白い話になる気がしたので、まずは小説を書き、映画の撮影後にまた小説にフィードバックする形を取りました。映画ではタカシ、〈竹内〉、〈岡田〉、〈ミツル〉役の4人を全てオーディションで選びましたが、生身の彼らが動く度に物語が飛躍していったので」