公称827万世帯を信者に抱える創価学会では、池田大作・名誉会長の「位置付け」に変化が見られる。今後、池田氏からの世代交代が生じた時、学会はどうなるのか、宗教学者の島田裕巳氏が解説する。
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創価学会幹部を悩ませるのが、池田氏からの世代交代と時期の重なる学会員たちの高齢化だ。創価学会が爆発的に拡大した1960年代に入会した学会員は池田氏の活躍ぶりを直接知っているが、その子供以下の世代となるとよく知らない。教義や創価学会の辿ってきた歴史に対しても理解が薄いだろう。池田氏を崇拝対象にしても、政治的に組織の影響力を示せるかどうかは疑問が残る。
また、学会員には創価学会を支持母体とする公明党の選挙を支える役割もあるが、若い世代には、憲法改正や安保法、原発再稼働などの政策で連立する自民党と歩み寄り続ける公明党に疑問を抱いている人も多い。
池田氏はこうした学会員の気持ちを汲み取り、公明党にブレーキをかけて福祉政策に強い党を維持してきたが、世代交代後も公明党が自民党と同調するばかりなら、組織票に陰りが見えてくるかもしれない。
こうした悩みを現上層部が抱えたまま、カリスマ不在で世代交代を迎えたとき、創価学会は大幅に縮小するという見方もあるが、私は少なくとも表面的には変わらないと考えている。
世代交代後を担う若い世代は、組織への忠誠心は親世代ほどではなく、「ポスト池田」にもほとんど関心がないと思われるからだ。
彼らはかつてほど布教活動や政治活動に入れ込んでいるわけではない。しかし一方で、「壮年部」「青年部」「婦人部」といった組織内部の結びつきは強く、その活動は宗教教団としての形を超えて「日常化」している。学会員同士の人間関係を“生活基盤”としたうえで、組織がどうあれ、自分自身がどう生きるかに重きを置くようになっているように見えるのだ。
そのイメージは、慶應大学の同窓会「三田会」に近い。「三田会」もまた、他大学には類のない団結力を誇り、卒業後も塾員としてのアイデンティティを共有する基盤となっている。
※SAPIO2017年2月号